問われるソフトバンクの手腕 前例なき“サラブレッド”の日本球界挑戦

2019年06月04日 11時00分

試合を観戦したスチュワート

【広瀬真徳 球界こぼれ話】ソフトバンクが昨年の米ドラフト1巡目(全体8位)でブレーブスに指名されたカーター・スチュワート投手(19)と契約合意に達したことが話題になっている。

 米メディアによると、スチュワートはソフトバンクと6年総額700万ドル(約7億7000万円)で契約。将来的には米メジャーでの活躍を視野に入れているという。

 米ドラフト上位選手がメジャーを経ず日本球界に直接入るのは前代未聞のこと。手首の不安と金銭面での交渉決裂で昨季こそ米球界入りを見送ったものの、今年の米ドラフトでも上位指名が確実視されていた。そんな有望選手が資金潤沢なソフトバンクから高額契約を提示され日本でプロ人生をスタートさせる。1年目から好成績を残せるか。育成重視か。日米の球界関係者、ファンが関心を寄せるのも当然だろう。

 もっとも、いいことばかりではない。懸案事項の一つが「日本球界特有の育成法に順応できるか」だ。

 周知の通り、米メジャーに加入する新人はまず球団傘下のマイナーチームに所属するのが一般的。ごく一部の選手を除き2AやシングルAから始動し、下部リーグで実力をつけながらメジャー昇格を目指す。

 ところが、日本球界にはリハビリ組中心と言われる三軍を除けば、育成主眼のリーグは二軍しかない。即戦力と判断されれば一軍で起用される。春季、秋季キャンプを含め米国とは圧倒的に練習法も異なる。異国の環境下で将来を嘱望される米右腕が期待通りに日本で成長を遂げ、メジャーに羽ばたけるのか。

 同時に不安視されるのが即戦力と判断された場合の起用法だ。有望選手であればあるほど、代理人は契約を通して起用法を制限する傾向が強い。

 某球団の渉外担当もこう話す。

「一軍での起用となれば、一試合の球数制限やイニング数、年間登板数などの付帯事項を契約に盛り込んでくるはずです。そうなると受け入れる側の首脳陣は選手起用に慎重にならざるを得ない。仮にチームがスチュワートを特別扱いすれば他選手に影響を及ぼす可能性もある。すでにメジャーで実績のある選手ならともかく、新人選手への多大な厚遇は周辺選手との摩擦の原因にもなりかねない。今後球団はそうした問題にどう対処していくのか。扱い方が難しいでしょうね」

 育成に定評のあるソフトバンクとはいえ、前例のない“サラブレッド”の日本挑戦を支え、自軍の戦力に育て上げられるのか。球団の手腕に注目したい。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。