自律神経失調症のため戦列を離れていたソフトバンク・中村晃外野手(29)が31日の楽天戦(ヤフオク)で一軍復帰した。「7番・右翼」で先発出場すると、大歓声で迎えられた2回の第1打席で適時二塁打。「大きな声援が後押ししてくれた」と塁上で満面の笑みを浮かべた。

「またグラウンドに戻れるかは分からない」。求道者のように野球に向き合ってきた男は、そんな不安を抱えていた。開幕直前の3月23日、自律神経失調症であることを公表。異変はその4か月前に生じていた。

「最初におかしいと感じたのは去年の12月。その後、症状が治まらなくて、どこか体の病気というか内臓系とかの疾患かなと思った」

 毎日続く不眠症と発熱。自主トレを経て春季キャンプに突入しても症状は消えなかった。2月に病院に出向き、病名を告げられると「正直、全然予想していない結果だった」と驚きを隠せなかった。「毎日、どこかのタイミングで37度以上の熱が最低1回は出る」。昼夜問わず、突然の発熱が5月に入っても続いた。

「寝ついても寝られるのは良くて3時間くらい。睡眠の質が悪いので疲れが取れない」と不眠症が疲労回復を遅らせた。「僕はずっと試合に出続けてこその選手」と存在価値を自負しているからこそ致命的に感じた。

 それでも三軍戦、二軍戦、ファームのビジターとステップを踏み続けた。症状によって出場を見合わせることもあったが、努めて前進する道を選択。「打つ、守る、走るは問題ない。僕の場合はグラウンドに立てるかどうか」。環境の変化に適応し、症状が緩和すれば即一軍で結果を残す自信は揺らがなかった。

 この日は試合前の声出し役を担当。ナインと絶妙な掛け合いを見せるなど「ここで野球ができるすばらしさ、楽しさを改めて感じた」と笑顔が絶えなかった。まだ万全ではなく後退する可能性もあるが、大きな一歩を踏み出したのは事実。チームは首位攻防戦に1―3で敗れたが、頼もしすぎる男の復帰は今後の戦いを明るく照らすはずだ。