巨人が28日の阪神戦(甲子園)に延長12回、4―8でサヨナラ負け。3位に転落した。このところ一時の勢いに陰りが見えてきている感もあるが、原辰徳監督(60)は巻き返しの策として、2年目捕手の大城卓三(26)の一塁への完全コンバートを決断したことが分かった。あてにならない助っ人に見切りをつけた格好で、今後は純和風クリーンアップで再浮上を目指す。

 完全に勝ちパターンのはずだった。初回、丸の8号ソロで先制すると、3回に坂本勇が通算200号本塁打となる17号ソロ。4回には大城が左翼線へ適時二塁打を放つなど、2点リードで終盤へ。だが8回、3番手の澤村がマルテに同点2ランを被弾して延長に突入すると、12回に8番手・池田が代打・高山に満塁弾を浴び力尽きた。

 原監督は「粘って粘っていたけどね。最後はちょっと池田に荷が重かったかな」と総力戦を振り返ると「緊張感の中、一人ひとりが肥やしになるゲーム」と評価した。

 この日の試合には敗れたものの、指揮官が手応えを感じたのは、2戦連続で「5番・一塁」でスタメン起用した大城が適時二塁打を放ったこと。理想的な中押し点の瞬間、ベンチの指揮官は満面の笑みを見せた。

 吉村打撃総合コーチは「大城の将来のことを考えた。打席に立つ機会が増えるし、捕手と一塁はそんなに簡単に両立できるものじゃない。一塁に専念して打撃に集中してほしい」と、今後は捕手をやらせず、完全コンバートの方針を明かした。

 24日の広島戦(東京ドーム)前から一塁ノックを受け始め、26日の広島戦(同)で「5番・一塁」でプロ初となる公式戦での一塁守備。ドタバタ感は否めないが、原監督は「2日間で準備をさせて、サインプレーも含めて準備周到の形で今日出たということですね」と大城の“一塁デビュー”を振り返った。

 大城本人は「一塁守備はまだ慣れないですが、やるしかないです」と語ると、クリーンアップとしての起用に「光栄です。頑張ります」と前を向いた。秋季キャンプから大城を捕手として鍛えてきた相川バッテリーコーチは「チームとして5番打者が欲しいということ。こうなったら一塁のレギュラーを奪ってほしい」と送り出した。

 打力で勝るパとの交流戦を前に「2番・坂本勇、3番・丸、4番・岡本」に加え「1番・亀井」「5番・大城」で打順を固めるのが狙い。首脳陣の一人は「ウチは打力ではパには負けていない。交流戦を最低5割で乗り切れば広島と勝負できる」と今後の見通しを語った。

 つまりは大城に打撃に専念させれば、助っ人より頼りになるという判断で、好不調の波の激しいゲレーロや、開幕当初5番打者として期待され、現在二軍調整中のビヤヌエバには見切りをつけた格好だ。

 5年ぶりのVに向けなりふり構わず手を打った原巨人。果たしてこの決断は打線のカンフル剤となるか。