ソフトバンクと契約合意報道・米昨年ドラ1指名右腕の代理人ボラス氏 NPB球団選択の狙い

2019年05月23日 16時30分

日本球界行きを選択したボラス氏

 ソフトバンクが昨年、ブレーブスから全米ドラフト1巡目(全体8位)指名を受けたカーター・スチュワート投手(19)と契約合意したとの報道が複数の米メディアで報じられ、波紋が広がっている。同投手の代理人を務めるのは、敏腕で知られるスコット・ボラス氏(66)。同氏がNPB球団との契約を選択した真の狙い、そして今後の展開とは――。

 米スポーツ専門局「ESPN」などの報道によると、ソフトバンクとスチュワートの契約内容は「6年契約で700万ドル(約7億7000万円)以上」となり昨年、高校を卒業したばかりの最速158キロ右腕は「まずは日本のマイナーリーグ(二軍)でスタートする」という。

 昨年指名を受けたブレーブスとは契約交渉を行ったが、450万ドル(約4億9500万円)前後と予想されていた契約金を、身体検査で手首に懸念が判明した結果、提示額は200万ドル(約2億2000万円)程度に抑えられ、7月上旬の期限までに合意に至らなかった。

 スチュワートの代理人・ボラス氏をよく知る米球界関係者は、今回の米トップアマの日本行きの背景を「単純にNPBに行った方が稼げるから」としスチュワートの置かれた状況をこう語った。

「今年(6月)のドラフトで指名される可能性はもちろんあったが、指名順位がセカンドラウンド(2巡目)に落ちることをボラスは懸念していた。そうなるとボーナス(契約金)は100万ドル(約1億1000万円)前後に下がる。さらに、19歳の投手がメジャーに上がるためには順調に行っても4~5年はかかる。もらえても20万~30万ドル(約2200万~3300万円)と低く抑えられるマイナーの給料を考えれば、その期間日本に行った方が断然稼げる」

 そして、近年もメジャーの第一線で活躍するダルビッシュ、田中、前田、大谷、菊池らが証明するように「日本の育成システムは優秀だし、仮に成績に応じて5年目以降にポスティング移籍容認の契約を結んでおけば、25歳前後に晴れてメジャーと大型契約を結ぶことも可能になってくる。メジャーに昇格しても1年目の昇格時期を巧みに5月以降にずらすことによって、FA取得に7年間かかってしまうのが最近のメジャーの状況。総合的に勘案してFA取得を早める新たなルート開拓が今回の契約の意味合いかもしれない」と、その狙いを推察する。

 近年、メジャーではウォール街出身のアナリストらが多くGMに登用され球団運営を任されている。「費用対効果」を重視する新経営陣は極力無駄な投資を行わず、最小限の投資で最大限の効果を得ようと補強費用を出し渋っている。その象徴がいまだFAマーケットで“売れ残る”ダラス・カイケル(前アストロズ)であり、通算333セーブのクレイグ・キンブレル(前レッドソックス)といった大物投手たちだ。

 いてつくFAマーケットと並行して年々、契約金制限が厳しく抑えられていくMLBドラフト…。今回の全米トップアマの日本直行は、ボラス氏の「アマチュア選手にカネを出し渋るとこうなるぞ」という脅しにほかならず、今後、米国の若手有望株がこぞってNPB球団との契約を望む時代が来るかもしれない。