ソフトバンクが昨年米ドラフト1巡目投手強奪で勃発!? 仁義なき日米スカウト抗争

2019年05月22日 16時30分

 ソフトバンクが昨年の米ドラフトでブレーブスから1巡目指名を受けた、最速98マイル(約158キロ)右腕、カーター・スチュワート投手(19)と400万ドル(約4億4000万円)を上回る条件で契約に合意したと21日に米大リーグ(MLB)公式サイトが伝えた。同投手はブレーブスと契約に至らず、現在はイースタン・フロリダ州短大に在学中で、今年のドラフトでも上位指名候補と評価されていた。日米間にはドラフト候補の獲得に関して紳士協定があり、米球団によって突破されたことはあったが、逆のケースは初めて。アマ球界を巻き込んでの“日米スカウト摩擦”に発展する可能性も出てきた。

 198センチと長身のスチュワートは最速158キロを誇り、一級品のカーブもある。昨年の米ドラフトではブレーブスが1巡目指名(全体8位)した。しかし、身体検査で手首の問題が生じ、ブレーブスとは契約金の折り合いがつかず交渉決裂。スチュワートは短大に進学し、今季は2勝2敗、防御率1・70、74回1/3で108三振を奪っている。MLB公式サイトのドラフトTOP100で59位と6月3日(日本時間4日)からのドラフトで再び上位指名されると目されていた。

 そんな金の卵が30球団あるMLBではなく、日本球界を選んだというのだから驚き以外の何物でもない。この日、西武戦が行われたセルラースタジアム那覇で取材に応じた三笠杉彦球団本部長は「ノーコメントです。現時点で話をすることはない」と言い、獲得について否定はしなかった。

 ソフトバンクは今年1月に前レッドソックススカウトの嘉数駿氏がフロント入り。世界戦略を明確に打ち出してきた。同氏の加入による新たな補強ルートの開拓については、後藤球団社長も「いろいろあるから。そのうち出てくるよ」と本紙に“予告”していた。

 高額契約で知られるメジャーでは、ドラフト上位指名選手になると代理人もついている。昨年、タイガースから全体1位で指名されたケーシー・マイズの契約金は750万ドル(約8億2500万円)だった。

 一方で、米球界では有望な新人でもマイナー契約からスタートするため、年俸は低い。条件面さえ折り合えばNPB球団に入団してポスティングでメジャーに戻るというルートも“あり”だ。潤沢な資金を誇り、親会社が世界基準を掲げるソフトバンクなら不可能を可能にもできる。

 ただ、波紋は広がりそうだ。今回はMLBに正面から殴り込みをかけた形で、米中貿易摩擦ばりの“日米スカウト摩擦”に発展する可能性もある。球界関係者は「スチュワートは米国のドラフト上位候補です。ソフトバンクは自由競争の中で動いているわけですが、日本のアマは大変になるかもしれません。メジャー側が『それなら、こっちがどう動いても文句は言わないでくださいね』となることも想像できます」と警鐘を鳴らす。

 NPBとMLBの間には双方のドラフト候補選手とは交渉しないという紳士協定がある。ドラフトにかかるような有望な日本人選手はNPB球団に入団後、ポスティングもしくは海外FA権を行使して移籍するのが正規ルートだった。

 とはいえ、グレーゾーンもあった。2008年には現カブス傘下の田沢純一投手(当時新日本石油)が自身の意思として12球団宛てにドラフト指名を見送るよう要望。レッドソックスとメジャー契約を結び、いわゆる「田沢ルール」ができるきっかけになった。昨年はパナソニックの吉川峻平投手がダイヤモンドバックスとマイナー契約を交わして話題を呼んだ。

 今回の件はメジャー側からすれば、まさかの強烈なカウンターパンチだったはず。もっとも、従来の紳士協定が完全に有名無実化して自由競争のウエートが強まれば、大歓迎なのは米国側だろう。近年、アマチュア選手のメジャー志向は強まっている。それこそ大船渡・佐々木朗希投手のようなスター候補がNPBを経由せず、メジャーに流出するリスクが高まるかもしれない。

 ソフトバンクの“ウルトラC補強”は日米両球界に一石を投じることになりそうだ。