担当記者が明かす巨人・上原の反骨心秘話

2019年05月21日 16時30分

会見で感極まる上原

 最後まで“雑草魂”を見せつけた。巨人・上原浩治投手(44)が20日、21年の現役生活に別れを告げ、東京都内で引退会見を開いた。異例のシーズン途中での決断も「今年で辞めることは最初から決めていた」と涙ながらに明かした背番号19。日本球界前人未到の“トリプル100”を成し遂げた不屈のレジェンド右腕が熱く訴え続けたメッセージとは――。本紙名物連載「中継ぎピッチャーズバイブル」の担当を務めた記者が思いをつづった。

 涙に言葉を詰まらせて始まった会見の冒頭。心境を問われ「もうちょっとやりたかったな」と口にしたのが実に上原らしかった。超がつく負けず嫌い。たび重なる故障と戦いながら21年間プレーを続け、日米通算134勝、128セーブ、104ホールドの金字塔を打ち立てた。突き動かしてきた原動力は「負けたくないという気持ち。反骨心です」と胸を張った。

 マウンドに未練を残しながらも決断したのは「二軍でも通用しなくなったから」。右腕には先発、中継ぎ、抑えの全ポジションを第一線で務め続けてきたプライドがあった。“トリプル100”を「中途半端な記録」としたのも、あまのじゃくな上原流の照れ隠し。以前、本紙には「たぶん、これからも出ない数字であろうと僕の中では思っているんで」と強烈な自負をにじませていた。

 ルーキーイヤーに先発ローテーション投手としていきなり20勝を挙げてエース街道を駆け上がった上原だが、選手生活後半に口酸っぱく訴え続けたテーマが「中継ぎ投手の地位向上」だ。ブルペン陣の不振がV逸の主因とやり玉に挙げられた昨季は、若い仲間たちを思ってチーム批判スレスレの言葉も吐いた。

「僕が日本へ帰ってきて一番違うなと感じたのは、(中継ぎ投手が)いつ投げるか、というのが分からないこと。ここは“完投文化”があるから、中継ぎは中6日とか平気で空いたりする。メジャーは3日以上は空けない。間隔が空いていれば体が軽いと思うかもしれないけれど、ブルペンでは投げていますから。クローザーは(登板のタイミングが)分かる。でも、中継ぎはやっぱり難しい」。球場へ向かう車中。「これ以上言ったら怒られちゃうな」と言いつつ、止まらなかった。

 仕事場へのプライドは人一倍。だが“メジャーかぶれ”では決してない。巨人復帰後、印象的だったのは「僕は今、アメリカの野球より上だと思ってやっている」という言葉だ。上原は巨人で日本一、レッドソックスでは守護神として世界一を経験した。ひと足先に引退したイチロー氏と同様に「アメリカ野球に追いつけ追い越せ」を体現して帰ってきた男だからこそ、日米の野球を語る言葉には重みがあった。

 MLB球団の年齢を重視する契約傾向に「おかしい」とかみ付き「潰してやりたい」と牙をむいたこともある。大谷の故障を早くから“予言”し、滑るメジャー球の使用に警鐘を鳴らした。後輩たちが続々と海を渡ることを喜びつつ「田沢が戻れないようなシステムはどうなのか」と依然として高いアマチュア球界、NPB、MLBの間の壁に物申したことも…。

 何にも縛られない立場となった今、歯に衣着せぬ“上原節”がもっと聞きたい。

(中継ぎピッチャーズバイブルSeason2担当・堀江祥天)