ソフトバンクの恐ろしさを他球団スコアラーが涙目で力説 故障者続出でも戦力アップ

2019年05月21日 11時00分

一軍でチャンスを生かしている周東

【広瀬真徳 球界こぼれ話】昨季日本一のソフトバンクが、シーズン序盤から野手の故障者続出に見舞われている。

 4月5日に打線の中軸を担うグラシアルが左脇腹痛で戦列を離れる(5月3日に復帰)と、2日後には主砲・柳田が左ヒザ裏の肉離れで戦線離脱。代役として期待されていたプロ13年目の福田が同月中旬に右脇腹負傷で二軍落ちすると、今度はその穴を埋めるべく一軍昇格したベテラン・長谷川勇もわずか2日で登録抹消となった。

 開幕前から自律神経失調症で二軍調整を余儀なくされている中村晃、5月に入り、ともに足に不安をかかえる内川、デスパイネ、右手甲骨折の上林らを含めれば確かにこのチーム状況は尋常でない。工藤監督が「これ以上ケガ人が出ないように考えないといけない」と憂慮するのも無理はないだろう。

 客観的に見れば明らかに「非常事態」なのだが、意外なことに他球団はそう捉えていない。むしろ警戒感を強めているという。

 先日、ソフトバンク戦を観戦したパの某スコアラーが涙目でこう力説した。

「確かにソフトバンクの現状は主力不在で目先の戦いは厳しい。選手のやりくりは大変だと思います。でも、実際は若手起用や内野手の外野起用などでチームの底上げが進んでいる。これまでは主力にケガが少なく、首脳陣は若手を起用したくてもできなかった。それが今、主力の相次ぐ故障により心置きなく若手を抜てきできるようになった。そのおかげで二軍戦手や控え選手が一軍での出場機会を得られているのですから。『渡りに船』という状況でしょう」

 好例がプロ2年目内野手の周東佑京(23)という。

「彼は4月22日の西武戦で左翼手としてプロ初スタメン。その試合でプロ初安打となる1号3ランを放って以来、5月に入っても活躍を続けています。でも、故障者が出なければ今季一軍の試合に出場できたかどうか。ファームでは球界屈指の俊足として知られていましたが、開幕前の我々の分析では『実力があっても守る場所がない』というものでした。そんな選手が今季序盤から一軍で活躍、しかも内外野で通用することを証明した。プロ3年目の三森らの台頭も含めれば、我々には脅威でしかない。主力がケガなく頑張ってくれた方が長い目で見ればよかったかもしれません」(前出スコアラー)

 昨オフ、ホークスをクビになり、現在ヤクルトで活躍する五十嵐亮太も今春キャンプ、古巣についてこう語っていた。

「上(一軍)にいる時はあまり感じませんが、下(二軍)に落ちるとチームの強さを感じます。少しでも結果が出ないと、下には穴を埋める選手が揃っていますから。球団全体が短期的な勝利だけでなく、長期的な育成にも力を注いでいる。一度チームを出てみると改めてすごいところだと思いますよ」

 チームは5月に入り9勝7敗、19日現在で2位楽天に3ゲーム差をつけて首位をキープし、貯金は7つもある。

 ソフトバンクにとって故障者続出は戦力弱体化どころか若手育成の前倒しにほかならない。他球団から見れば戦力不足でも奮闘を続ける鷹の底力こそが…末恐ろしいのである。