ようやく下げ止まったか――。打率1割6分4厘でセ、パ両リーグを通じて最下位の広島・田中広輔内野手(29)が、10日のDeNA戦(マツダスタジアム)で153打席目にして今季初アーチとなる2ランを放った。開幕4戦目まで15打数7安打と絶好調だったが、そこから急降下。この日の試合前まで打率1割6分と光の見えない状態が続いていた。

 安打は20打席ぶり。打点は70打席ぶりだった。5回一死一塁から相手先発・今永の投じたスライダーをとらえて鯉党の待つ右翼席に放り込んだ田中広は「何とか食らいついていきました。打てて良かったです」と実感を込めた。今季は不動だった1番を外れること10試合。最近では9試合連続で座る8番が“指定席”になりつつある。

 田中広は試合後も多くを語らずに球場をあとにしたが、迎打撃コーチによれば遊ゴロに倒れた第1打席で長いトンネル脱出の手応えをつかんでいたという。「(球の)見方や構えとかをいろいろやっている中で、本人も『1打席目の初球の見逃し方が違いました』と言っていた」。緒方監督も「何か一つきっかけになってくれれば…。練習では少しずつ打撃の調子が戻ってきているのは見える」と証言する。

 田中広は604試合連続フルイニング出場中。ネット上では個人記録に関する議論がヒートアップしていたが、マツダスタジアムでは毎打席、ひときわ大きな拍手と声援が送られる。待望の一発が出た瞬間は、まるで逆転弾を放ったかのような熱狂の渦に包まれた。どんな状況でも常に温かく見守ってくれる鯉党の期待に応えるためにも、田中広は打って恩返しするしかない。