これも「原流」か。二軍降格となった巨人の外国人野手2人に異例の態勢が敷かれた。7日、二、三軍合同練習が行われたジャイアンツ球場に一軍打撃コーチ陣も勢揃い。ゲレーロとビヤヌエバのファーム初練習に熱いまなざしを向けた。助っ人2人がコミュニケーション不足から不満分子化する危険性もあるだけに、その予防策として原監督ら首脳陣は最善のマネジメントを行った格好だ。

 珍しい光景だった。二、三軍合同練習が行われたジャイアンツ球場にゲレーロとビヤヌエバもファーム降格後、初めて姿を見せた。しかし室内練習場で黙々とフリー打撃を行った助っ人2人よりも、周囲の目がクギ付けになったのは傍らで視線を送る一軍スタッフ3人の姿だった。吉村打撃総合コーチと後藤打撃兼外野守備コーチ、元木内野守備兼打撃コーチが一斉に視察に訪れたのである。

 この日のチームは8日にDeNA戦が行われる新潟への移動日で、一部の投手陣以外は休養日となっていた。この時期に野手陣を預かる一軍コーチ3人がわざわざ揃ってファーム練習に足を運ぶのは極めて異例のこと。しかも、成績不振で二軍に降格したばかりのゲレーロとビヤヌエバの打撃練習をほぼ付きっきりで“凝視”。時折、助っ人2人に声をかけるシーンも見られ、一軍練習とほとんど変わらないVIP待遇のような光景だった。

 吉村コーチは助っ人2人について「下で調子を上げてくれれば。なるべく早く戻してあげたい」とコメント。視察の理由に関しては「今日は休養日だし、組織としてやっているからね。彼らだけじゃなくて、あくまでも全員を待つということ」と強調した。

 とはいえ、首脳陣が過去の悪夢再来を警戒しているのは明らかだ。特にゲレーロには“前科”がある。二軍降格となった昨年7月にはジャイアンツ球場で行われたファーム練習を視察に訪れた当時の高橋由伸監督と面談を行う予定だったが、これを一方的に拒否。「ここまで話し合いというのはなかった。ゼロコミュニケーション。今日は話をする状況ではない」などと報道陣に怒りをぶちまける騒動を起こしたのは記憶に新しい。

 規律を重んじ、今季のスローガンにも組み込まれる「和」を大事にする原監督としては同じ轍を踏まぬようにしたいところ。だからこそ助っ人2人が不満分子とならぬように、密なコミュニケーションを図ろうと事前に策を打った格好だ。指揮官への「忠誠」と「絶対服従」のピラミッド形の力関係をあらためて示したともいえる。

 元木コーチも「違う国でやっているんだからね。やっぱりね、一人ぼっちにさせちゃダメよ。チームメートだし、仲間だし。コミュニケーションをずっと取ってあげないとダメ。日本人と同じようにね。(助っ人2人には)『リフレッシュして調子を戻して頑張ってくれ』と言った」と補足した。

 一方のゲレーロは練習中、その元木コーチと談笑したり、日本語で「ごめんなさい」を連呼するなどリラックスムード。「いいプレーを見せられなかった。早めの復帰? 自分もそう思っています」と真摯な態度に終始し、前を見据えた。

 ひとまず“ゲレーロの乱・令和編”は回避。やはり原監督は助っ人操縦術も百戦錬磨と言えそうだ。