ソフトバンクは6日のオリックス戦(ヤフオクドーム)に9―6で逃げ切り5連勝。両リーグ20勝一番乗りで貯金を今季最多の9とし、首位独走態勢に入った。ここ4試合は平均8得点。その直前、チームは2試合でわずか1得点だったが、貧打が解消された最大の要因はジュリスベル・グラシアル内野手(33)が3日左脇腹痛から緊急昇格したことだ。

 この日も初回に適時二塁打、2回に4号ソロと存在感を発揮し、復帰後4試合で打率5割、3本塁打、7打点。工藤監督は「万全ではない中で素晴らしい集中力。彼が戻ってきて打線に厚みが増した」と感謝した。

 そんなチームの救世主は、とにかく真面目でストイックだ。森ヘッドコーチは「こちらが止めないと練習をしすぎてしまう」と心配し、今も個別で行うトレーニングの量は「故障前と変わらない」(球団スタッフ)との証言がある。

 不屈の精神は尊敬を集めている。同胞の後輩・モイネロは「映画のロッキーよりもロッキーらしい人だ」と評する。合流した3日にグラシアルがグラウンドに入るタイミングで「ロッキーのテーマ」が球場に流れた。それはモイネロの敬意の証しだった。

 復帰後すぐに結果が出ているのは鍛錬のたまものだが、家族の存在も活躍を後押ししている。先月末に妻子がキューバから来日。夫人がつくる母国料理に舌鼓を打ち、子供との何げない時間が癒やしとなり、心身の充実につながっている。一軍合流前のファーム施設(筑後市)への新幹線通勤では、日本人家族に席を譲るように連結部分に妻子と移動。キューバでは珍しい高速列車の車窓からの眺めに驚く愛息の姿に幸せそうな笑みを浮かべた。福岡市民の「ザ・憩いの場」である「大濠公園」や近所のショッピングモールにも家族で出かけている。

 趣味は「トレーニング」で、活力源の家族サービスも勤勉な男らしくどこか質素。「状態は日々上がってきている」と語るグラシアルが、迫力を取り戻した鷹打線の中心で輝いている。