いよいよ大本命が本領発揮だ。ソフトバンクは27日の日本ハム戦(札幌ドーム)を5―1で制して首位に浮上した。柳田を欠く打線にあって、けん引車になっているのが、左翼席上段に特大の3号ソロを放り込んだキューバの大砲、アルフレド・デスパイネ外野手(32)だ。開幕から不振に陥っていたが、王貞治球団会長(78)から密室で“特別講義”を受けた翌日からの7試合で23打数10安打、2本塁打と大当たりしている。

 3―0の3回、デスパイネのバットが火を噴いた。相手先発・上原の直球を左翼席上段へ。「打った瞬間入ると思った。いいスイングができたし完璧だったね」。ナインとのハイタッチを終えると、左足を上げるお約束のポーズで鷹党の声援に応えた。

 もともとスロースターターの傾向があるとはいえ、一時は打率1割5分を下回るスランプに陥っていた。ここにきての打棒復調の裏には、王球団会長による密室での“特別講義”の効果があった。

 調子がドン底だった18日のロッテ戦のこと。ZOZOマリンに王会長がやってきた。ヤフオクドームはほぼ全試合を視察しているが、他球場に顔を出すのは一年を通しても数えるほど。ビジター球団が使用する小部屋に向かうと、デスパイネを招いて15分ほど話し込んだ。

 王会長は「彼も自分でいろいろと考えて、やっているから。そのままやっていこうや、とね」と多くを語らないが、悩める大砲の重圧を解き放つべく、密室での質疑応答の中で“金言”を送ったという。

 球団関係者が明かす。「どちらかといえば技術よりメンタル的な話が中心だったようです。柳田が離脱している分、自分がやらないといけないという意識が強かったみたいですから。『とにかく自分の打撃をしてくれればいい。必ず結果は出るから』。それに『君はどの方向でも捉えられればホームランになるんだから』と。あそこから当たりが戻ったからね。スッキリしたところがあったのでしょう」

 効果てきめんだった。20日の西武戦では11試合ぶりの本塁打を逆方向に運んだ。キューバ球界にもその名をとどろかす“世界の王”によるアドバイスから、この日を含めた7試合で打率4割3分5厘(23打数10安打)、2本塁打。

 現在の王会長は現場から一線を引く立場で、選手に個別にアドバイスを送ることは珍しい。デスパイネは大感激だったようで、球団通訳は「ありがたい? そりゃそうですよ。あの王会長から声をかけてもらうんですから」と証言する。

 感謝の気持ちを表すためにも打ちまくるしかない。