一足先に鯉のぼりだ。広島は23日の中日戦(マツダ)を3―2のサヨナラ勝ちで制し5連勝。4位タイに浮上した。試合を決めたのは2―2の9回二死満塁から執念の右前打を放った小窪だが、勝利を呼び込んだのはプロ初先発で7回2失点と結果を残したアドゥワ誠(20)だ。試合後、先発に転向させた佐々岡真司投手コーチ(51)は笑顔を見せたが、チーム内にも“別の安堵感”が広がった。それは――。

 降りしきる雨のマウンドでも昨季53試合に登板してリーグ3連覇に貢献した若き右腕は落ち着いていた。初回、先頭の平田に初球をバックスクリーンへ運ばれる不穏な立ち上がり。2―1の5回にも再び平田のソロを浴びてプロ初先発を白星では飾れなかったが「粘り強く投げられた」。7回105球を投げて6安打2失点は合格点だろう。

 広島は27日のヤクルト戦(神宮)から12連戦に突入する。先発陣は開幕ローテーションからすでに岡田、九里が不振で離脱し、アドゥワの投球内容次第では大連戦を前にローテーション崩壊の危機にあった。大瀬良、床田、野村、ジョンソンに続く5人目に3年目右腕がハマり、苦しいながらも12連戦を何とか乗り切るメドが立った。アドゥワを先発転向させた佐々岡投手コーチも「見事に期待に応えてくれた」とえびす顔だ。

 196センチの長身右腕が救ったのは厳しい台所事情だけではない。実はチーム内で懸念されていた佐々岡コーチの“パンク危機”の回避にも一役買った。

 同コーチはオフに手術した左ヒザが万全ではない中で開幕を迎え、ふたを開けたら投手陣は壊滅状態に…。イニング途中での投手交代やピンチの場面でマウンドへ駆け寄る機会も増え「最近は逆(右ヒザ)もきているんだよ」と周囲にこぼしていたほど。選手やスタッフも「こんな状況が続けば佐々岡さんの離脱も時間の問題では…」と真顔で心配していた。

 ここへきて投手陣が復調の気配を見せ、秘蔵っ子のアドゥワも好投。タクシーへ乗り込む際の佐々岡コーチの軽やかな足取りが、上昇気流に乗ってきたチーム状況を物語っていた。