このまま一気に突っ走るか。リーグ首位の巨人が23日、2位・ヤクルトとの首位攻防戦(神宮)に9―0と大勝。貯金も今季最多の6とした。3戦連続の零封リレーで4連勝。その立役者となったのが先発の山口俊(31)だ。8回1安打無失点の快投でリーグ単独トップとなる無傷の4勝目を飾った。そんな頼もしき右腕は移籍3年目の今季になってもいまだ巨人に「慣れていない」と言い切る。どういうことなのか。本紙に対し、独自のポリシーを明かした。

 安定感抜群だった。マウンド上の山口は自分のリズムを崩さず、球威も終盤まで衰えなかった。フォークが要所で冴え、ツバメ打線を圧倒。8回101球、1安打無失点6奪三振3四球の快投で開幕4連勝を飾った。

 登板後は「前回から状態はすごくいい。その中でもしっかり今日はコントロールできたのかなと思います」とコメント。唯一の被安打となった6回一死、代打・上田に許した投安打については「自分自身も捕れたボールだったので、ちょっと悔しいなというのはある」と唇をかんだ。途中までは自身2度目となるノーヒットノーランの快挙達成も予感させるような内容だっただけに、悔しさもにじませた。

 この日は守護神のクックが右肘の違和感で出場選手登録を抹消された。代役ストッパーに9試合連続無失点中の中川を配置し、新たな中継ぎ要員として野上を二軍から昇格させるなどチームは予期せぬブルペン再編を強いられた。そんな緊急事態にリリーフ陣の負担軽減にも一役買った右腕は「常に僕自身は完投を目指してやっている。その中で今日は球数もなんとか少なく抑えられて良かった。しっかり次、この次とね…。いい調整ができるように頑張ります」と謙虚な言葉を忘れなかった。

 これでハーラー単独トップの4勝無敗、そしてエース菅野をも上回るチーム1位の防御率1・86をマーク。候補にも挙げられている3・4月の月間MVP受賞も見えてきた。

 文句なしの絶好調モード。ところが山口本人は至って冷静だ。浮かれることなく自分の立ち位置をかみ締め、DeNAから移籍3年目となった今季も“初心”を忘れていない。それが証拠に本紙から「巨人に慣れてきたか」と質問をぶつけられると右腕は「いや、ないです」と即答し、こう続けた。

「いや、もう“慣れる”っていうのはないと思います。常に毎年毎年が勝負なわけですしね。どの世界においても慣れるっていうのが一番怖いと思うんで。常に自分を窮地に追い込むじゃないですけど、そういう考えのもとでやっていかないと。引退するまでは成長したいんで」

 FAで移籍加入した2017年は右肩痛で開幕三軍スタート。グラウンド外で泥酔トラブルを引き起こすなど期待を大きく裏切ってしまった。こうした自責の念を今も胸に刻みながら、マウンドでは全力で結果を残そうと心血を注ぐ。YGユニホームを身にまとう誰もが自覚する「ジャイアンツプライド」に関しても、山口は自身の解釈をこう語る。

「野球だけじゃなくて、トータルしてじゃないですか。今までも当たり前のことを、当たり前のようにすることじゃないですかね。その当たり前がみんなできないことなんで。そういうことを(ジャイアンツの)皆で(自覚)するっていうことじゃないですかね」

 試合後の原監督からも「すべて良かったんじゃないかな」と激賞された。菅野とともにG投を支える山口がチームを5年ぶりのV奪回へ導くため、独自の「ジャイアンツプライド」を貫き続ける。