ヤクルトの10代スラッガー・村上 チームトップの5本塁打も石井琢コーチは「一人前にはまだ時間がかかる」

2019年04月24日 11時00分

本塁打を放ち、ナインの祝福を受ける村上

【赤坂英一 赤ペン!】ヤクルト・村上宗隆はいよいよ、広島・鈴木誠也の域に近づいているのではないか――と、その鈴木を広島で育てた石井琢打撃コーチに聞いたら、一笑に付されてしまった。

「いや、まだまだ。そこまではいってませんよ」

 2017年のドラフト1位で九州学院から入団した村上は今季、開幕から主に7番でスタメン出場を継続中だ。一時打率が1割5分まで下降し、二軍落ち寸前だったが、12日に巨人のエース菅野から2安打。さらに14日巨人戦、16日阪神戦と2試合連続で勝ち越し本塁打を放って踏みとどまった。

 この時点での5本塁打はバレンティンを抜いてチームトップ、10代での2戦連発も球団史上初と、16年に「神ってる」と言われた広島・鈴木をほうふつとさせる。が、鈴木と村上を指導した石井琢コーチの採点は辛い。

「一人前になるにはまだ時間がかかるでしょう。今年のキャンプではフォームの割れをつくることが村上の課題だった。それがもっと早くできていれば、もっと結果がついてきたと思うんですが」

 この「割れ」とは、足を前に踏み出したとき、バットを持つ腕が後ろに残っていること。上半身と下半身が反対方向に「割れ」て、体が開かない状態を意味する。

「村上も高校時代までは、自分なりの打ち方で結果を出していた(3年間通算52本塁打)。そういうバッターは、プロでも最初のうちはただ教えられた通りにやろうとはしないものです。一軍の試合で、一流の投手の球を見て、自分のやり方では通用しないんだと納得してからでないとね」

 最近、その一流の投手を打てるようになったのは「自分なりに考えて対応できるようになってきたから」だという。が「まだしっかりした形になっていません」と石井琢コーチは指摘する。

「今の主役は青木、山田哲、バレンティン。彼らが活躍しているうちに、村上は脇役としてチームの信頼を勝ち取らないといけない。(リーグ最多4失策の)守備でも迷惑をかけてるんですから、そのへんも含めてもっとレベルアップしないと」

 そういえばヤクルトが前回優勝した15年、打点王になった畠山は「若手のころは一軍のベンチが怖かった」と言っていた。「凡退すると古田さんや宮本さんににらまれるので次は絶対に打たなきゃと思った」のだそうだ。今の村上にも、もっとそういう経験が必要かな。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。毎週金曜朝8時、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」出演中。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」(講談社)などノンフィクション増補改訂版が電子書籍で発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」(PHP文庫)など。最新刊は構成を務めた達川光男氏の著書「広島力」(講談社)。日本文藝家協会会員。