広島の大ベテランが意地の一打だ。17日の巨人戦(熊本)2点を追う9回に決勝打を放ったヒーローはチーム最年長の石原慶幸捕手(39)。菊池涼の適時二塁打で同点とし、なおも二死二塁の場面で、クックの高めへ外し損ねた直球に食らい付き、しぶとく中前へ運んだ。値千金の勝ち越し打に、普段クールな男が塁上で派手に右手を突き上げた。直後の守りでは守護神・中崎を巧みにリードし、試合後には喜びと安堵が入り交じった表情で仲間とハイタッチを交わした。

 今年初のヒーローインタビューでは「最高の結果になりました。自然に出たガッツポーズでしたね」と照れくさそうに笑った。チーム最年長らしく「先発の(野村)祐輔から無駄な失点がなかったことで、こういう結果になった。これがカープの戦い方」と仲間をたたえることも忘れなかった。

 かつての正捕手も今季で40歳を迎える。近年は後輩の会沢に先発マスクを譲り、前日はついにジョンソンの“専属捕手”も解除となった。新井がチームを去り、最年長となった自分も引き際が頭をよぎる。それでも高いモチベーションを保って準備を重ねているから、ここぞでまだ輝ける。

 今オフは心が沸き立つニュースもあった。この日対戦した巨人・阿部の捕手復帰だ。石原にとって1学年先輩のベテラン捕手は学生時代からの憧れ。「大学時代から公私共にお世話になった人で、プロ入り後も目標にするのもおこがましい人。同じ捕手として『阿部さんがまたキャッチャーに戻る』という事実が純粋にうれしい」と刺激を受けていた。

 阿部はこの日、9回一死一塁の土壇場で代打として登場。「実績も風格もある選手。(結果は)四球になっちゃいましたけど、とにかく勝てて良かった」。ベテラン同士のしびれる勝負を終え、充実感をにじませた。

 丸の勝ち越し弾で試合が決まっていれば広島にとってはダメージが残った試合だった。殊勲打の石原には、緒方監督も興奮気味に「よう打ってくれた」。もがく後輩たちに、いぶし銀のベテランが大きな背中を見せた。