【赤坂英一・赤ペン!】今季、広島が4連覇を逃したら「あの3連戦がポイントになった」と言われるだろう。先週9~11日、昨季19勝6敗とカモだったヤクルトに本拠地で3連敗。しかも、第2戦で延長10回、1イニング12失点を喫する記録的な大惨敗だった。

 もっとも、勝ったヤクルトに「してやったり」と胸を張る者はいない。小川監督はこう言った。「あの3連戦では広島の投手陣がよくなかった。とくに第3戦は(岡田、矢崎らが)四球、四球で全然、歯止めが利かなかったからね。野球をやるのは選手。ああなったら、ベンチ(首脳陣)としてはどうしようもないよ」

 昨年広島からヤクルトに移籍した石井琢打撃、河田外野守備走塁コーチも「いまはカープの状態がよくないから」と口を揃える。「いまはシーズンが始まったばかり」(小川監督)とあって、この程度でいい気になってはいられないのだろう。

 しかし、広島のほうは危機感いっぱい。チームの内情に詳しい広島OBが、ため息交じりに言う。

「今季序盤は、カープの選手の真面目過ぎる面が裏目に出ています。自分が何とかしなけりゃいけない、失敗を取り返さんといかん、という意識が強過ぎて、ミスや四球の連鎖につながっている。ヤクルトとの第2戦で2度もタイムリーエラーをした菊池涼がいい例だ」

 そういえば、3連覇が始まる2016年以前、野村前監督時代の広島は時々、あんなひどい負け方をしていた。長年広島を見ている私には、あの弱かった昔に戻ってしまったようにも思える。広島の低迷の原因を、あるセ球団の首脳陣は、このように指摘した。

「(現巨人の)丸の穴が大きいと言われるけど、昨年引退した新井の穴のほうがよっぽど大きい。新井は苦しいときにこそ力を発揮する、丸以上の精神的支柱だったから。いまのカープには、もがいてる選手を一つの方向性に導いていける強力な大黒柱がいないんだ」

 これと同意見なのが、DeNA・ラミレス監督。12日の広島との試合前、こう発言しているのだ。

「いまのカープにはリーダーがいない。丸もそうだが、新井がいないのも大きいと思う。彼は強力なリーダーだったから」

 敵将から見ても、新井の存在感はそれだけ大きかったのだ。本当なら、鈴木、田中広、菊池涼らが広島のニューリーダーにならなくてはならないのだが。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。毎週金曜朝8時、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」出演中。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」(講談社)などノンフィクション増補改訂版が電子書籍で発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」(PHP文庫)など。日本文藝家協会会員。