巨人は首位攻防戦となった12日のヤクルト戦(東京ドーム)に6―1で快勝。今季、本拠地初登板の菅野智之投手(29)が7回を119球4安打9奪三振1失点の好投で2勝目を挙げた。あっという間に首位を奪還したエースの快投の裏には、目に見えない“天敵”との格闘もあった。

 無人の野を行くような投球だった。昨年のクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦(10月14日、神宮)でCS史上初となるノーヒットノーランを達成したゲンのいい相手に菅野は初回、山田に2号ソロを被弾。だが、その後は追加点を許さず、4回無死一、二塁のピンチも三者連続空振り三振で切り抜け、7回1失点と好調の燕打線を抑え込んだ。

 5回には自ら今季初安打となる左前打をマーク。犠打で二進すると坂本勇の左翼フェンス直撃二塁打で打球のゆくえを見守るとハーフウエーから本塁に激走。チーム4点目となるホームに滑り込み走攻守で躍動した。

 前回登板のDeNA戦(5日、横浜)で3点しか援護できず菅野に完投を強いたG打線もこの日は坂本勇の3号ソロ、亀井の2号ソロ、岡本、代打・阿部の適時打などで5回までに大量6得点を叩き出した。「粘り強くバッテリーで攻めていけた。満足はしていないです」と振り返った菅野に指揮官も「今日はうまく変化球を使っていた。球そのものも走っていたけど真っすぐ狙いという中で逆をついた。裏を使った投球というのもできるんだということを見せたんじゃないでしょうかね」と目を細めた。

 そんなエースを後押ししたのが本拠地の「空気」だった。菅野はプロ入り以来、花粉症に悩まされている。それも症状は「8種類中5種類の花粉症」(菅野)と重く、「スギ」「ヒノキ」のメジャーどころ以外に「ブタクサ」「イネ科」「ヨモギ」などにも苦しんでいるが「薬は使っていない。放っておいてます」とドーピング検査との兼ね合いもあるためひたすら耐えているという。

「スギは終わってもこれからはヒノキ。この間の浜スタではずっと鼻水が出ていた。外で風があると本当にひどい」と屋外球場での苦闘を明かす菅野は「ドームは100%違いますね」と本拠地登板を心待ちにしていた。

 その東京ドームは今年、5年ぶりに人工芝が張り替えられた。これも菅野にとっては大きなプラス材料となった。別の花粉症持ちのG投手は「これまでは花粉に加えてドームに舞うホコリが症状に拍車をかけていた。人工芝の張り替えで今年はホコリが少なくなってかなり楽になった」と証言。クリーンな本拠地で実力をそのまま発揮できた菅野は「やっぱり東京ドームは最高」とお立ち台で笑顔を見せた。