巨人が10日の中日戦(ナゴヤドーム)に2―3で逆転負けを喫し、連勝を逃した。先発のメルセデスが一発に泣いたが、低調だった若き主砲・岡本が2本の適時打で復調気配を漂わせるなど好材料もあった。原辰徳監督(60)にも焦りは皆無で、長いペナントレースを見据えてナインを鼓舞する“妙案”も用意している。

 主砲のバットから快音が響いた。試合前まで4戦連続無安打で打率1割8分4厘まで落ち込んでいた岡本は、初回二死二塁のチャンスでロメロの151キロを中前へ痛烈な先制打。20打席ぶりの安打で勢いづくと、同点の6回には適時二塁打を放ち、勝ち越しに成功した。ただ、その裏に好投を続けていたメルセデスが福田に逆転2ランを浴びて敗戦となったが、チームはヤクルトと並んで首位をキープした。

 岡本は「チームスポーツなので、しっかりチームが勝てるように。中軸を打っている責任もあると思うので、次はしっかり勝てるように頑張ります」と4番の自覚を口に。原監督は「(岡本は)今日はちょっと力が抜けていい感じでしたね」と淡々と語り、打線が手を焼いたロメロとの初対決も「いい教訓として次につなげればいいでしょう」と前を見据えた。

 シーソーゲームを落としたとはいえ、まだ11試合で貯金も3。一喜一憂するチーム状態でもなく、指揮官に感情の起伏は見られない。今後の長丁場の戦いを見据え、グラウンド外でも選手のモチベーションを上げる“秘策”を練っており、それがチームが勝利した際には「ご褒美」として門限を緩和する作戦だ。

 遠征時のナイターであれば当日の試合時間にもよるが、門限は原則として午前1時に設定されている。しかし、チームが勝てば門限を1時間遅らせ、2時に変更するというもの。昨季を振り返れば、一部選手の不祥事が相次ぎ、コンプライアンスを重視する球団サイドが現場の管理体制を厳格化。遠征参加メンバーは外出する際に行き先や飲食をともにするメンバーを記した紙を球団スタッフに提出することが義務付けられ、ウップンがたまった選手たちから大ブーイングが起きたこともあった。

 一定の引き締めも大事だろうが、極度の締めつけはかえって選手たちの反発を招くもの。人心掌握にたけた原監督ならではの発想だろう。チームスタッフは「門限を緩めた次の日も万全のコンディションでグラウンドに来ることが大前提でしょうけどね。息抜きの時間が少しでも長くなるなら、選手たちもますますやる気になるんじゃないですか」とメリットを強調する。

 V奪回の十字架を背負い、球団から編成も含む全権を託された原監督。ナインの心理を知り尽くすベテラン指揮官は、時間も巧みに操りながら頂点を目指していく。