阪神が31日のヤクルト戦(京セラ)を1―2で落とし、4年ぶりの開幕3連勝を逃した。FA移籍後、初登板となった西勇輝投手(28)が初回に2点を失いながらも7回2失点と好投。しかし、打線がわずか4安打で1得点と援護できず。3試合で4得点と貧打が続くとあって矢野監督も「西らしい投球はしてくれた。打線が援護しないといけなかった」と肩を落とした。

 そんな悔しい初黒星を喫したはずの直後のグラウンドでは“まさかの光景”が繰り広げられた。指揮官を筆頭にコーチやナイン全員が一塁側ベンチ前に並び、帽子を取ってスタンドに向かって深々と一礼をしてから引き揚げたのだ。ホーム球場の場合、勝利後にハイタッチを行いその流れでスタンドへあいさつするというのが通例。ファンから何を言われるかも分からない敗戦後にあいさつをするのは異例だ。

 ただ、矢野監督は「ずっとやろうと決めていた。勝ったときは一緒に喜び合う。負けたときでも気持ちのつながりができていければいい。(勝ちでも)どっちでもこれからやっていく」とキッパリ。シーズン最後までホームでの“試合後一礼”を貫くことを宣言した。

 そうした指揮官の考えに球団幹部も「サッカーなど他の競技ではすでにやられていることでもある。勝敗に関係なく感謝の意を伝えるのは大切なこと」と賛同。さらに「続けていけばファンの方も監督の気持ちを理解してくれるはず。ヤジを浴びることもあるかもしれないが、負けが込んだときも結果として批判は少なくなるのではないか」と“ヤジ減効果”にも期待を寄せる。

 ここ数年は関西ならではの痛烈なヤジに若手が萎縮してしまうこともあるが、試合後に顔を出してあいさつすることで敗戦後でもファンの怒りが和らぐ可能性はある。この日の一礼の際も拍手を浴びた矢野監督。今後もファンを味方にシーズンを戦うつもりだ。