5年ぶりのV奪回を目指す巨人は、王者・広島との3連戦(マツダ)で開幕。そのカープからFA移籍した丸佳浩外野手(29)にとっても新たな戦いの始まりだ。伝統球団の一員となった2年連続MVP男は、カープ在籍時の定番だった「敬礼ポーズ」を完全封印。そこに込められた特別な思いとは――。

 開幕前日の28日、広島入りしたチームは夕方から敵地で最終調整を行った。必勝の十字架を背負い、指揮官として通算13年目のシーズンに突入する原監督は大勢の報道陣を前に「開幕というのは我々にとって一番めでたいところ。いよいよスタートするというところで非常に高ぶるというか、荒ぶるものがありますね」と、いよいよ戦闘モードに入った。

 目下、チームはカープに4年連続で負け越し。白星を配給し続けたことが、リーグ独走を許した一面もある。5年連続V逸となれば、球団史上最長のワースト記録。今季こそ歯止めをかけるため再々登板したのが経験豊富な原監督であり、補強面ではFA史上最大の目玉だった丸も獲得した。そんな丸はこの日、昨季までホームだったグラウンドで汗を流し「当然、日本一になるために頑張っていますし、それしかない。1打席目の1球目からしっかり入っていけるようにしたい」とポーカーフェースで意気込みを語った。

 自らに課せられた使命は自覚している。プロ入りしたカープ球団には、もちろん愛着もある。しかし、今では伝統球団のユニホームに袖を通し、古巣は最大にして最強のライバルとなった。自分の意思で巨人の一員となった丸の覚悟は、自身の行動にも表れている。その一つが「敬礼パフォーマンス」を封印することだった。

 広島時代の丸は得点を挙げるとチームメートや、守備につく際などに大声援を送ってくれたコイ党に向けてビシッと敬礼ポーズを決め、球場全体を盛り上げてきた。それが、巨人移籍後はオープン戦を含めて派手なパフォーマンスは一切なし。いったい、どんな心境の変化があったのか。丸本人に聞くと…。

「僕がジャイアンツでも敬礼をしたら、ファンの皆さんに対して失礼に当たるんじゃないかと思ったんです。カープでやっていたことを、そのままジャイアンツに持ち込んでやることが果たしていいことなのか…。僕は違うんじゃないかと思いました」

 知人の消防士との出会いから敬礼ポーズが生まれ、そのパフォーマンスでファンを喜ばせたのもカープでの出来事。新天地に飛び出したからには“ケジメ”をつけるのが筋ではないか――。敬礼をしなくなった裏側には、そうした思いが隠されていた。

 ちなみに、巨人の球団内には「相手チームを刺激したり、侮辱するものでなければパフォーマンスすること自体は問題ない」との声もあるが、当の丸は「特にやろうとは思っていないです。今のところ予定はないですね」とのこと。身も心もGに染まった2年連続MVP男が、まずは古巣へ強烈な恩返しをお見舞いする。