裏切ることはできるのか――。本紙を含めた各メディアで開幕前恒例の順位予想が報じられているが、昨年最下位の阪神は中日とともに5、6位のBクラス予想が大半。就任1年目の矢野燿大監督(50)もさぞやガックリかと思いきや、むしろチーム一丸で屈辱の最下位予想を歓迎している。

 昨季は最下位で、今年のオープン戦も5勝11敗1分けで12球団中11位。上位に推す材料も乏しくOBを含めた評論家陣は「投手力はあっても打てないから上位は難しい」「野手の戦力アップができてない。昨年と同じように苦労する」と手厳しく軒並みBクラス予想。まったく、どいつもこいつも…とV奪回に燃える矢野監督にすれば腹立たしい話だろうが、本人の胸中は真逆だった。

「(順位予想の傾向は)知ってるよ。でも、その方が面白いと思ってる。(予想が)1位やったから良かった…とかはないし、むしろ下に見られてる分、覆した時の反動が大きくなる。オープン戦でも11位ではなく最下位だったら面白かったのに…と思ってたぐらい。だから楽しみですよ」

 指揮官だけではない。コンビを組む清水ヘッドコーチも「上位予想ばかりだと余計なプレッシャーになることもある。評価が低い方が思い切ってやれる。順位予想は気にしてない。(予想を)裏切れるようにやるだけ」と肯定的で、選手会長の梅野も「僕らは応援してくれるファンに順位で返すだけ。シーズンの行方は誰にも予想がつかないから気にしても仕方がない」と意に介さない。

 強がりというわけでもないようだ。「昨年最下位で金本監督も辞めるはめになった。あちこちで酷評され、チームとしても鍛えられた」とは球団幹部の弁。一軍首脳陣の大半が二軍からの初昇格組で「一軍での本番経験なしで大丈夫なのか。選手に厳しくできるのか」(阪神OB)などと指摘されている点も「そういった指摘も何度も聞いているから慣れた。(一軍では)素人集団と自覚してますよ。監督が言うように先の心配ばかり考えても仕方ない。やってみないと分からない」(あるコーチ)と日増しに頼もしくなっている。

 下位に予想されたぐらいで動じない。その意気や良し。矢野阪神が本当に楽しみになってきた。