6年連続Bクラスながら実質補強なしの中日が、リーグトップのチーム防御率(3・23)を維持しオープン戦を終えた。これは12球団でもオリックスに次ぐ数字で、昨季12球団ワーストの4・36だった投手陣とは思えないほど改善の兆しを見せている。

 その裏には与田剛新監督(53)の“ど真ん中指令”があった。昨季までの楽天投手コーチ時代、ピンチを招いたらどこを狙うかを投手陣に聞くと、判で押したように「アウトコース低めです」との返答ばかり。指揮官は「困った時にアウトローに投げられるヤツは困らない。そこでできるなら最初からやれってなる。窮地に陥っているにもかかわらず、すごいことをやろうとしてもできるわけがない。力もなくて調子も悪くてピンチになるんだから、そうなったら真ん中か、それよりもちょっと低めを狙うので精一杯ですよ」と力説する。

 そのため与田監督は、投手コーチも通じて中日投手陣に「とにかく真ん中、真ん中だよ。真ん中のボールでどれだけバッターを打ち損じられることができるかが大事。投手は全部一人でやりたがるけど、そのために野手が守ってくれているわけだから」と口酸っぱく言ってきた。さらに今後は「打者がど真ん中を打ち損じるシーンだけを集めて、それをずっと見せてメンタルトレーニングさせようかな」とまで。

 その意識が投手陣に浸透してきたようで、制球力がアップした佐藤は「監督からは『四球を出したらどうしようとか考えるな。とにかく真ん中をめがけて思い切って腕を振ればいいんだ』と何度も言われ続けてきて、今は気持ち的にも楽に投げられている」と証言する。

「意識改革がちょっとずつできてきて、それが好結果になっている」と自信を深めている与田監督。このまま投手王国の再建に成功できれば、シーズンでも光明が見えてくる。