古巣巨人と対決した「ひげ長野」の覚悟

2019年03月06日 16時30分

マツダスタジアムに初登場した長野

 開幕カードでもある広島―巨人戦が5日、マツダスタジアムで行われ、平日のオープン戦としては大盛況と言える2万2572人が詰め掛けた。真っ赤に染まった球場で注目を集めたのは、もちろんあの2人。FAで巨人に移籍した丸佳浩外野手(29)には本人も想定外の歓迎ムードで迎えられ、その人的補償で赤ヘル軍団の一員となった長野久義外野手(34)は、さりげなく古巣と一線を引いた。

 ファンが待っていたのは赤い背番号5だった。7回二死二塁で長野が代打に立つと、マツダスタジアムは割れんばかりの大歓声に包まれた。

 支配下登録されたばかりの右腕・坂本工との対戦で右邪飛に倒れたが、主役の登場にコイ党だけではなく三塁側ビジター応援席のG党も温かい拍手。本拠地デビューを飾った長野は「走者がいたので、かえせたらよかったですけど…」と悔しさをにじませつつ、大声援には「ありがたいですね」と感謝した。

 試合での出番は一瞬だったが、古巣との初対戦で長野の覚悟が垣間見えた。象徴的だったのが、試合前の振る舞いだ。練習が終わると、ロッカーから小走りで向かったのは巨人が陣取る三塁側のベンチ裏。目的は若手時代から世話になった原監督へのあいさつだった。「おお、元気か、チョーさん」。“元上司”から肩を抱かれて激励されると、Gナインとのあいさつはそこそこに一塁側へ急いで戻った。

 あえて人目につく場では古巣の仲間と交わらないようにした。練習中に駆け寄ってきた坂本勇とはグラウンド上で握手はしたが、巨人関係者との関わりはそれだけ。社会人としてあいさつは大切だが、ファンやチームメートに巨人に未練があると受け取られるのは本意ではない。自分はもうカープの一員。あらぬ誤解を避けるための配慮だった。

 巨人では禁止されているヒゲをたくわえて対戦に臨んだのも長野なりのメッセージ。本人は「触れないでください」と語らないが、意味のない行動はしない男だ。長野は2014年に巨人から中日へ移籍した小笠原(現中日二軍監督)の姿を間近で見ている。小笠原は巨人を出ると、かつて日本ハム時代にトレードマークだったヒゲを再び伸ばし、決別の意を示した。カープ関係者にもそうした思いが伝わるからか「格好から溶け込もうという姿勢がうれしいじゃない」と“ヒゲチョーノ”は好評を博している。

 開幕戦の前哨戦に4―1で快勝したカープナインは試合後、広島市内のホテルで地元政財界による激励会に出席。あいさつに立った広島商工会議所の深山英機会頭が「長野さんには広島の街を昼も夜も元気にしていただけたら」とあいさつすると、会場はどっと沸いた。これには思わず苦笑いの長野だったが、新天地の熱すぎる期待にまんざらでもない表情にも見えた。