日本でのメジャー式マウンドの採用は投手に追い風

2019年02月20日 11時00分

レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークで投げる松坂

【球界こぼれ話 広瀬真徳】日本球界で今、マウンドの「メジャー化」が加速している。

 昨年末、広島の本拠地・マツダスタジアムのマウンドが粘土質のメジャー仕様に変更される計画が報じられると、今年1月には阪神、巨人も相次いで改修を発表。早ければ今春から多くの球場でメジャー式マウンドが採用される可能性が高まっている。

 周知の通りメジャー仕様のマウンドは従来の日本のものに比べ硬いのが特徴。私自身、レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークのマウンド硬度を確認した経験があるが、同球場のマウンドは金属製スパイク刃で強打しても容易に穴が掘れなかった。仮に日本の各球場がこの仕様に近いものに変更されれば、投手は上半身主導のフォームが要求される。同時に、踏み出す足にかかる負荷により、ふくらはぎやヒザ、腰などに故障が発生する危険性も指摘されている。こうしたリスクを考えれば昨今のマウンド改修は日本人投手にとって「厄介な課題」になりかねない。

 にもかかわらず、なぜ今年に入り日本球界はマウンド改修に躍起になるのか。パ・リーグの某スコアラーに理由を聞くと、「野球の国際化や来年に迫る東京五輪対策など諸説が飛び交っていますが、一番の要因は投手にメリットが多いから」と言い、こう続けた。

「実はパ・リーグの複数球団は数年前からすでに硬めのマウンドを採用しています。そのマウンドで投げた投手から次々と『制球しやすい』という声が上がっている。例えばある先発投手の場合、従来の軟らかいマウンドだと、試合中盤には相手投手との投げ合いにより踏み出す足の部分が徐々に“沈下”。試合序盤に比べボールを投げる瞬間のリリースポイントが2~3センチほど下がり、この誤差が遠因で制球を乱していた。でも、硬いマウンドでは踏み出す足の部分の凹凸が減り、リリースポイントが安定。制球力が向上したのです。昨年11月に行われた日米野球でも複数の日本人投手が硬いマウンドで投球した際、制球が良かったことを実感したそうですから。こうした声が選手間で広まり、今年に入って一気に球界全体に波及したのでしょう」

 では、ケガのリスクはないのだろうか。

「昔と比べ今の選手は体幹を鍛えている。マウンドの硬さによりバランスを崩したり腰やヒザを痛めるということはまずないと思います。実際、メジャーで活躍する日本人投手も1年目から硬いマウンドに順応している。投球フォームや体に過度の負担がかかるという説は言い訳にしか聞こえません。最初の違和感さえ克服すれば、必ず投手にプラスに働くはず」(前出スコアラー)

 ヤフオクドームの「ホームランテラス」や今季新設されるZOZOマリンの「ホームランラグーン」など、各球場がここ数年球場を狭める傾向にある。「打高投低」が進む中、マウンド改修が投手陣へのささやかな追い風となるか。注目していきたい。

 ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。