ヤクルトに10年ぶりに復帰した五十嵐亮太投手(39)が、チーム4年ぶりの優勝に向け、大きな期待を寄せられている。しかし、キャンプ初日からブルペン入りも2日目に下半身の張りを訴え、以後は別メニュー調整。現状はどうなのか。そしてソフトバンク退団時の舞台裏は…。キャンプ地の沖縄・浦添で直撃した。
――ソフトバンクを戦力外になり、10年ぶりにヤクルトに復帰した。チームの雰囲気は以前と比べてどうか
五十嵐 今のところ雰囲気は(10年前と)大きく変わった感じはしないです。ただ、周りの選手がやはり若くなってますね。前にここ(ヤクルト)で一緒に戦っていた選手がコーチや裏方さんになってますし。(小川)監督を含め、そういう人たちと一緒に過ごした時間の方が、今いる選手より長いですから。そのあたりの違いはありますけどね。
――キャンプ初日にブルペン入りしたものの、2日目から下半身の張りで別メニュー調整が続いている。久しぶりに古巣に戻り、少し飛ばしたのか
五十嵐 いや、飛ばし過ぎて痛めたわけではないです。今、右のふくらはぎが少し張っている感じですが、毎年ここは春先に張りが出やすかったので。ただ、例年より少し張りが強い感じだったので、今回は監督やトレーナーと相談して無理しないようにしました。自分としてはそれほど心配はしていません。
――オフにソフトバンクから戦力外を言い渡された後、昨年末までなかなか去就が決まらなかった。一時は引退も考えたのか
五十嵐 正直、それはなかったです。まだ自分の中では投げられると思っていたので。
――そのモチベーション、根拠はどこにあったのか
五十嵐 肩とヒジがまだ元気だからです。どちらかがダメなら、この年(39歳)ですからどこかで区切りをつけなければならない。でも、肩、ヒジが元気だとあきらめられませんよ。それに昨シーズンは(椎間板)ヘルニアの影響でスタートから3か月間投げられない状況が続いた。そこから復帰した過程の中で自分の修正すべきポイントを理解したつもりなので。それをまだやりきってない。そういったことをやり尽くしてダメだったら、あきらめ時を考えるでしょうけど、今は考えられない。せっかくヘルニアも治したわけですから。
――具体的に自分の中で理解している「修正ポイント」というのは
五十嵐 やっぱりフォームですよね。力の発揮するポイントとかです。若い時、30歳過ぎぐらいまではある程度、力でカバーできましたけど、今はそうはいかない。自分の年齢、体のバランスに応じてタイミングなんかを少しずつ変えていかないといけない。自分のパフォーマンスを最大限に発揮するという意味では今も昔も変わらない。でも、結果としてスピードは落ちてくる。その穴埋めをしていくという感じです。
――10年前のヤクルト時代は150キロ超の直球で押して三振を奪うスタイルだったが、今年5月に40歳になる今は年齢、体に応じた投球ができる、と
五十嵐 そうですね。投球の幅というか、どうしたら打者を抑えられるかというのはわかってきたつもりです。その自信があるからこそ野球を続けている。今年、それを出し切って結果が出たら、今後もう少し長く野球ができる可能性も出てくる。僕自身はそこに期待しています。
――ソフトバンク時代の同僚だった松坂大輔(現中日)も昨季、新天地で復活を遂げた。やはり彼から受けた刺激もあるのか
五十嵐 もちろん、それもあります。そういうのは見ているだけで伝わってきますから。ただ、向こう(松坂)はグリーンカード(永住権)のことでアメリカに行ってしまったんですよね? 大丈夫なんですか? 早く戻ってきてほしいです(笑い)。
――松坂投手もそうだったが、ソフトバンクは選手層が非常に厚い。やはりベテランには厳しい環境なのか
五十嵐 そうは思いません。やはり野球は結果ですし、実際結果を出し続ければソフトバンクでも生き残れます。でも、少しでも結果が出ないと、下(二軍)にはちゃんと穴を埋める選手が揃っている。そのあたりがすごいチームです。それにチーム全体が短期的な勝利に加え、長期的な育成にも力を注いでいる。一度(チームを)出て改めて見てみるとすごいチームだと思いますよ。でも、僕自身はクビになりましたけど、まだやれる自信はある。今はヤクルトで活躍して、その姿を見てもらいたいです。
――では、今季の目標は
五十嵐 目標…というより、結果を残し続けるためには体のリカバリー(回復)が大事になってくると思います。ケガなくマウンドに立ち続けることができれば、自然と結果はついてくると思うので。そのためにもまずはケガをしないということです。
――今回、キャンプ序盤からあえて別メニュー調整に踏み切ったのも、その思いがあったからこそ
五十嵐 そうです。結局、ケガをして投げられなければそれで終わってしまう。そうならないよう、今年は体には気をつけたい。
――ヤクルトで結果を残すことが、古巣ソフトバンクへの恩返しにもなる
五十嵐 そうですね。まだまだ自分の中ではやれるというところを見せたいですし、ヤクルトは戦力として見てくれているので。早く体の状態を万全にして、チームに貢献できるよう頑張りたいです。