世界に笑われた“スモール・ベースボール”

2013年03月23日 16時00分

WBC連載:侍はなぜ負けたのか(下)

 

 3連覇を期待された第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は17日(日本時間18日)の準決勝でプエルトリコに敗れ、夢はついえた。敗因として8回の重盗失敗が各メディアで取り上げられているが、果たしてそれだけが原因だったのか――。

 

 指揮官の表情は明らかに疲れ切っていた。AT&Tパークで行われたプエルトリコ戦終了後、会見場に姿を見せた山本監督は「敗因は相手の先発ピッチャー、投手陣のキレとデキが良く、なかなかチャンスがつかめなかったこと」と力なく述べた。

 

 この日の相手先発はマリオ・サンティアゴ。昨季は韓国のSKに所属し、今季はドジャースとマイナー契約を結んだ技巧派タイプの右腕で、日本側は事前に入手した情報を入念にチェックし「メジャー経験もなく、くみし易し」と見ていた。

 

 ところが、1点だけ見落としていた重要な事実があった。このサンティアゴは昨年2月、SKの沖縄キャンプで来日し、日本ハムとの練習試合で登板していたのだ。

 

「ナカタ、イナバ、イトイ…。彼らとは対戦経験があったから、それぞれどんなタイプの打者なのか分かっていた。とてもイージーだったよ。SKからもらったデータも含め、私が知っていることは他の投手たちにもすべて伝えた」とはサンティアゴ。4回1/3を投げて2安打無失点と試合をつくり糸井、中田、稲葉の3人から2三振を奪って無安打に封じ込んだ。さらに日本を苦しめたのが、マスクをかぶったメジャー屈指の名捕手ヤディエル・モリーナ(カージナルス)だった。サンティアゴやスコアラーからの情報を生かして、テンポの速い投球で侍打線を料理。試合後には、ご丁寧に「今後の国際大会で多くの代表国が我々と同じ攻め方をすれば、日本はとても苦しめられるだろう」と侍ジャパンへの“警告”まで発した。

 

 いまだ日本国内でも物議を醸している8回一死一、二塁からの重盗失敗がターニングポイントとなったのは間違いない。ただ、ライバルたちが疑問視したのは作戦の成否ではなく、それが「4番・阿部」の打席で起きたことだった。プエルトリコ陣営は「我々の野球ではスラッガーが打席に立っている場面で、重盗のサインを出すことはありえない」と首をかしげ、米スポーツ専門局「ESPN」も「スラッガーを侮辱するかのようなミステリアスな作戦」と評した。満を持していたはずの情報戦でお株を奪われ、日本が誇る“スモール・ベースボール”が大舞台で世界に笑われたのだ。

 

 誰が「戦犯」と断じることはできない。ただ、選手会による「参加拒否」に始まり、難航した監督選考、合宿中に起きた数々のトラブルやボタンの掛け違いなど、最後まで侍たちの歯車はかみ合わなかった。

 

 =終わり=