目指すところは一つ――。西武から巨人へFA移籍した炭谷銀仁朗捕手(31)が本紙の独占インタビューに応じた。入団から13年間を過ごした古巣への思い、さらにはリーグ優勝から4年、日本一から6年も遠ざかっている新天地で期待される役割と自覚。初のフルイニング出場を目標に掲げながらも“引くところは引く”姿勢を打ち出すなど、本音で洗いざらい語った。

 ――今年は大事なシーズンになる

 炭谷 節目の年ではありますけど、プロ野球選手である以上、一年一年が勝負。今年が特別という思いは特にないです。きちっとした形ではまだユニホームを着ていないし、選手みんなと顔合わせもしていない。27日が巨人の(キャンプ地)出発日。合同自主トレに入って、それからでしょうね。本当に巨人の一員になったんだと気持ちが高ぶってくるのは。今でも巨人の一員という気持ちではいますけど、余計に湧いてくるものはあるでしょうね。

 ――西武では森の育成もあって、この2年間は競争という状況になかった

 炭谷 だから「この悔しい思いがあってよかった」と思えるように絶対に生かさないとダメですよね。この2年間が潮時やった、あれからずっと落ちていって炭谷は終わったと言われないようにしないと。

 ――渡辺GMからは引き留められた

 炭谷 僕が入団して開幕から伊東監督(現中日ヘッドコーチ)に使ってもらい、たくさんいい話を聞かせてもらって、渡辺監督になってレギュラーとして育ててもらった恩がある。その人から直接話してもらって、それは感慨深いものがありましたよ。僕も腹を割って話せたし、交渉していく中での話としてはものすごくいい話ができた。変な言い方ですけど、納得して移籍することができた。

 ――西武への思いは一度胸にしまって巨人へ

 炭谷 そこは分からないです。原さんから「優勝するために力を貸してくれ」という言葉をかけてもらった。僕は本気で受け取っていますし、感謝してやってやろうという気持ちで行きます。かといって西武のことを忘れて…という気持ちでもない。西武にまだ心残りがあるという意味じゃなくて、そこはそこで感謝する部分も多いし、ずっと思っています。ヤフーニュースとかを見ていても当然、巨人のニュースは気になるし、西武も見ますから。

 ――西武ファンの多くが出場機会を求めての移籍に一定の理解を示している

 炭谷 僕ね、実際にいいことも悪いことも、あのコメント欄を読んでも気にしないんですよ。どんなにボロクソに書かれていても。だから全然いいんですけど、明らかに浅村とは反応が違いましたからね。だからファンの反応に対しての僕のコメントは差し障りがあるので控えます(笑い)。

 ――今年は「リベンジの年」という解釈でいい

 炭谷 当然もう一度よみがえらないと。

 ――この2年間は競争させてもらえなかった

 炭谷 それを(他人が)どう捉えるか分からないですけど、それをそう捉える人もいれば、単純に「競争に負けただけやろ」と捉える人もいるわけですから。どちらにせよ、巨人で思い切りやって結果を出すだけだなと。

 ――当然143試合出場を目指す

 炭谷 僕は今までも、これから先も、そこの目標がなくなったら野球人としてダメだなと思うくらい143試合フルイニング出場を目指している。これは城島(健司)さんが(2003年=当時は140試合)やってから誰もやってないんですよ。そこの目標は常に持っています。偉大な記録ですよ。当然、代走もあり得るしケガもあるだろうし、仮に3割5分、30発打ってても「休ませようか」ってこともあるだろうし。セ・リーグならなおさらですよ。究極だと思うんですけど、逆にそれで優勝したら究極の喜びやと思いますよ。

 ――実際に小林、阿部という強力なライバルがいる。特に前回WBCでは小林に正捕手を奪われて控えに回った

 炭谷 一緒に生活した中でいいヤツやし、(小林)誠司がどう思ってるか分からないですけど、捕手という枠は一つ。阿部さんも復帰したわけですし、みんながそこを奪いにいく。当然負けるつもりもないし負けたくないけど、巨人は4年続けて優勝から遠ざかっている。今年は絶対せなあかんという中で、相川さん(一軍バッテリーコーチ)も阿部さんもWBCで一緒にやってますから、優勝するために協力するという考えも持っています。一線を引かなきゃいけないこともあるでしょうけど、そこは僕の方が(巨人では)後輩なわけで投手陣のことは当然、阿部さんや誠司の方が分かっている。性格や特徴に関して僕の持っている情報はゼロですから、自分からガンガン聞いていかなきゃいけないと思っています。

 ――それは投手に対しても同じ

 炭谷 最初は行かんとダメでしょうね。今年32になる年ですし、ましてよそから移籍してきて後輩は気を使うわけですから、自分から話しかけないと。キャンプ、オープン戦は徹底的にそこをやらないとね。

 ――ユニホームを着ていない時間も

 炭谷 はい。それは城島さんにもよく言われたことですけど、野球だけの会話が全てじゃないと思うんで。普段の会話も性格を知るためには大事だと思う。そういうことはノートにもつけますよ。会話から僕が感じたことをね。