【広瀬真徳 球界こぼれ話】正月休みも終わり、間もなく1月中旬を迎える。この時期になるとプロ野球選手だけではなく、われわれ報道陣も春季キャンプに向けての準備が始まる。そんなさなか、計5球団(巨人、ソフトバンク、広島、西武、オリックス)がキャンプを張る宮崎で「ある問題」が浮上している。キャンプ期間中の宿泊施設が軒並み満室、または料金が高騰しているのだ。

 中でも際立つのが巨人、ソフトバンク、オリックスのキャンプ拠点になる宮崎市内。例年であれば、1月上旬でも大手宿泊サイトで検索すれば1人1室1万円以下の宿を見つけられる。ところが、今シーズンはビジネスホテルがほぼ満室。残っている部屋は1万円を超える割高な部屋や高級ホテルばかり。キャンプイン直後の週末(2月2~3日)や翌週の連休(2月9~11日)に至っては、格安ホテルですら1泊2万円以上で販売されている。

 この理由は今オフに大型補強を敢行した巨人の影響が大きいといわれる。

 原辰徳監督の3度目の指揮官就任に加え、広島からは丸佳浩(29)が加入。その他にも岩隈久志(37=前マリナーズ)をはじめ、中島宏之(36=前オリックス)、炭谷銀仁朗(31=前西武)、新外国人のクリスチャン・ビヤヌエバ(27=前パドレス)ら新戦力も宮崎キャンプから真新しい巨人のユニホームに袖を通す。報道陣やファンが殺到することが予想されるため、宿泊施設側も強気の料金設定なのだろう。

 宮崎市内のビジネスホテルにこの件について問い合わせると、支配人が電話口でこう漏らした。

「丸選手の巨人入りが決定した直後から、ものすごい勢いで予約が埋まり始めました。(宮崎)市内からは巨人だけではなく、昨季日本一になったソフトバンクのキャンプ地も近い。この2チームの盛り上がりによる相乗効果もあって、予約率が高くなっています。これはイチロー選手がWBCの宮崎合宿に参加した2009年のような感じです。あの時も宮崎市内は、すごかったですからね。宿泊料金が高騰しているのは需要を見越してのもの。お客さまには申し訳ありませんが、高い金額でも客室は埋まりそうなので…」

 この話を聞いて、09年当時を思い出した。確かに、この年は侍ジャパンに選出されたイチロー見たさに大勢のファンが宮崎に集結。2月後半にもかかわらず、市内の宿泊施設はほぼ満室に加え、レンタカーの確保も困難を極めた。日本代表の練習会場で現在も巨人がキャンプを張るKIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎周辺も早朝から大渋滞。通常なら市内から車で20分ほどで着くところを連日1時間以上要したほどだった。前出の支配人が言う「09年のような感じ」が現実になれば、今年の宮崎は「巨人特需」による人出が想像以上になる恐れもある。高い宿泊料金に大混雑…。取材する側、いやファンの方々も今年のキャンプは覚悟が必要かもしれない。

 ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。