今季で3年契約が満了したソフトバンクの長谷川勇也外野手(33)が20日、ヤフオクドームで契約交渉に臨み、野球協約の減額制限(年俸1億円超は40%)を超える50%ダウンの年俸1億円プラス出来高でサインした。「しょうがないという気持ちと、なにくそという気持ちです」と球団提示を受け入れ、来季の逆襲を誓った。

 今季は昨年11月に右足首を再手術した影響もあり、一軍昇格が6月までずれ込み、55試合の出場で打率2割8分7厘、5本塁打、20打点だった。「評価は自分でできるものではない」と大減俸については多くを語らなかったが、再起を誓う言葉と若手への思いが詰まった言葉に熱がこもった。

「若い選手に負けるわけがない。負けちゃいけない」。決して口数の多くない寡黙な男の決意表明。それは激烈なメッセージでもあった。「技術を伝えたいと思う若い選手が今はいない。残念です…。何のためにプロに、ホークスに入ってきたのか。どういう意図で練習しているのか、わからない。もっと高い意識を持ってもらいたい。そういう意識では(たとえベテラン選手が)一緒に練習しても伝わらない。だから僕は、負けるわけがないと言ったんです」。若かりしころの長谷川勇の練習量は、球団内では語り草だ。ゆえに絶大な説得力がある。

 自身も含め、かつて川崎、松田宣、本多、柳田、中村晃、今宮、上林ら“意志”を持った生え抜き選手が台頭し、常勝軍団を繁栄させてきた。手本や成功のヒントが数多く転がっている中で、それに目を向けずチャンスを潰していく若手に歯がゆさすら覚えていた。近年、特に若手野手の台頭が少ないのは、長谷川勇の指摘と無縁ではないだろう。来季35歳シーズンを迎えるベテランは「こういう年齢になって思うところもある」と自分のことだけではなく、球団の“危機”を察知し声を上げた。

 唯一無二の存在感を放ち常勝ホークスを下支えするベテランは、プロ13年目も背中でチームを引っ張る。

(金額は推定)