ロッテが丸に切った「監督手形」 FA交渉の切り札になる違和感

2018年12月22日 11時00分

丸はロッテから「監督手形」を提示されたが…

【広瀬真徳 球界こぼれ話】今オフ、多くの主力選手が新たな球団での船出を決断した。

 11月下旬に西武・浅村栄斗(28)がFA権を行使して楽天への移籍が決まると、直後にはオリックスを自由契約になった中島宏之(36)が巨人入り。その後、炭谷銀二朗(31=西武FA→巨人)、丸佳浩(29=広島FA→巨人)と続き、今月に入って金子弌大(35=オリックス自由契約→日本ハム)、西勇輝(28=オリックスFA→阪神)の移籍も発表された。

 いずれも年俸1億円を超える大物ばかり。主力の移籍は球界の活性化につながるため、今オフの動きには賛同したい。ただ、丸の移籍交渉の中で気になった点がある。「監督手形」という言葉が飛び交ったことである。

 球界屈指の好打者獲得に向け、丸のFA宣言直後から巨人、ロッテに加え、残留を望んだ広島も次々と好条件を提示した。マネーゲームは瞬く間に20億円を超えた。これでは資金力で劣るロッテ、広島は太刀打ちできない。そこでロッテは将来の監督手形を用意してラブコールを送ったようだが、この監督というポジション、FA選手獲得のための材料に使われていいのだろうか。

 確かにロッテが丸獲得となれば地元・千葉の盛り上がりに加え、2年連続Bクラスに沈むチームの起爆剤になったはず。札束を積み上げる巨人との争奪戦に勝つためにも、ロッテにしてみれば「最後の切り札」だったに違いない。

 とはいえ、「指揮官」とはチームをまとめ上げる手腕を持つ人間が組織の上層部から選ばれる役職。現役選手に権利が与えられ、引退後に自らの意思で権利を行使して就任する役回りではない。にもかかわらず、昨今の日本球界では有力選手獲得のために球団側が差し出すケースが見受けられる。こうした取引はルール違反ではないが、将来のことを考えれば様々な誤解や問題が生じる恐れもある。仮に密約があったとしても表沙汰にすべきではないだろう。

 歴史のあるメジャーでも引退後の監督就任を確約して選手獲得に動くケースは皆無に等しい。むしろ最近では面接や筆記試験を課すなど、球団全体で、より慎重に人選を進める傾向が強い。

 メジャーに倣う必要はないが、日本球界における監督手形の扱いには、違和感が拭い切れない。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。