【赤ペン!!赤坂英一】丸がFA移籍した巨人は来年3月29日、敵地・マツダスタジアムで広島との開幕戦に臨む。丸が古巣相手にどれだけ活躍し、広島がどう迎え撃つか、その対決にスタンドを真っ赤に染めたファンがどんな反応を見せるか、楽しみでならない。

 そこで思い出されるのが、江藤(現巨人三軍監督)が広島から巨人にFA移籍した2000年である。この年も3月31日、東京ドームの開幕戦で巨人と広島が激突。当時の広島・達川監督は「巨人との開幕3連戦は優勝がかかった133、134、135試合目のつもりで戦うぞ!」と宣言(このころは全135試合制)。巨人との“遺恨の対決”ムードをあおりにあおった。

 オープン戦初戦から巨人と対戦すると、試合前に「こんなに寒くて風の強い日は投手の手が滑りやすうてのう」と、江藤に対する内角攻めを予告。広島の若手投手に胸元を突かれた江藤が、のけぞってかわした拍子にバターン!とあおむけに倒れたほど。満を持して迎えた開幕戦では、3番緒方(現広島監督)、4番前田、5番金本(前阪神監督)と、いま見ると豪華かつ強力なクリーンアップで巨人と対戦。見事に5―4で競り勝つと、達川監督は試合後のインタビューで「まぐれじゃ、まぐれじゃ!」と絶叫。翌日も勝って2連勝したら、今度は「勝った、勝った、また勝った! 奇跡じゃ!」。巨人監督だった長嶋さんのお株を奪う“名セリフ”の連発で話題をさらった。

 ただし、当時の巨人との戦力格差はいかんともしがたく、対戦成績は12勝15敗で負け越している。江藤への内角攻めも本番では鳴りを潜め、江藤が受けた死球の数もわずか3個にすぎない。その江藤は9月24日、東京ドームの中日戦、0―4で迎えた9回に起死回生の同点満塁本塁打。直後の二岡のサヨナラ本塁打を呼び込み、長嶋監督の野球人生で一度きりとなった“本拠地胴上げ”を演出した。

 江藤の広島時代の背番号は、移籍の前年1999年まで長嶋監督がつけていた33だった。長嶋監督はそれを江藤に譲り、現役時代の永久欠番3のユニホームで宙に舞ったのである。

 あれから18年、丸は原監督の現役時代の背番号8をもらった。果たして江藤のような劇的なドラマをつくれるか。