巨人の“次期監督レース”が突然の幕開けだ。原辰徳監督(60)の「野球殿堂入りを祝う会」が10日、東京都内のホテルで開催され、安倍晋三首相(64)、OB会顧問の王貞治ソフトバンク球団会長(78)ら政財球界の重鎮がズラリ勢揃いした。時の総理大臣が“幻の政界オファー秘話”を披露するなど会は大いに盛り上がったが、最も注目されたのは山口寿一オーナー(61)による“ポスト原”への言及。球団トップの発言により、がぜんあるポストの行方が注目の的となってきた。

 これ以上ない豪華な顔ぶれが並んだ。タキシード姿で出席者に感謝を述べた原監督に続き、ゲストとして一番手にあいさつに立ったのは、なんと安倍首相だった。首相は神戸製鋼社員だったサラリーマン時代のエピソードを交えながら、若大将の足跡を称賛。また「こっちの世界(政界)に来てもらいたいなと思っておりましたが、巨人の監督になられましたのであきらめました」と本気とも冗談ともつかない話を披露し、会場を大いに沸かせた。

 首相の発声に続き、その後も壇上には王ソフトバンク球団会長、金田正一氏ら続々と重鎮が登場。読売グループの“総帥”渡辺主筆も頸椎骨折で8月に入院以来、初めて公の場に姿を見せた。現役からも愛弟子の阿部を筆頭に坂本勇主将、おいっ子の菅野選手会長らが駆けつけ、松井秀喜氏からはビデオメッセージが寄せられるなど、華やかな面々が会を彩った。

 原監督の軽妙なトークもあって笑いの絶えない会となったが、その途中には球団トップの聞き逃せない発言も飛び出した。会の発起人である山口オーナーが披露したのは、自ら監督就任を要請した際の秘話。同オーナーによれば、原監督は「コーチとして使いながら、ミスターは自分を次の監督として育ててくれた。大変な恩義を感じている。その恩を私はまだ返せていないんです」と話したという。また長嶋監督からバトンを受けた監督1年目に背負った83番をその場で希望したことも明かし「今回、原監督はヘッドコーチを置いていません。ヘッドコーチを空席にしています。背番号とヘッドコーチ、そのあたりに原監督の恩返しの気持ちが込められている、と私は思っています」と述べたのだ。

 原監督就任以来、常勝巨人復活への期待は常々口にしている山口オーナーだが、“ポスト原”というナイーブな問題に言及したのは今回が初めて。「全面的なバックアップ」を改めて約束しつつ、あえて1対1のやりとりを明かしたのは、今度こそかつての長嶋―原のような監督禅譲プランを実現させてほしいとの願いを込めたものだ。

 ポイントはヘッドコーチが空位であることを強調した点。読売関係者も「原監督の真意はともかく、オーナーとしては現時点で『後継者は固まっていない』とのメッセージを発したものでしょう。オーナーや原監督の念頭にあるのが松井か、阿部か、それとも他の誰かなのか…。いずれにせよ、次にヘッドに就く人材が正式な“次期監督候補”ということになるのでは」とした。

 原監督の任期は3年。その間に空位のヘッドコーチに就く人材は現れるのか――。思わぬタイミングで次期監督問題に火がついた。