ソフトバンク・柳田悠岐外野手(30)が「ミスターフルスイング」のルーツを語った。2日、福岡・大野城市で開かれた野球教室に講師役として登場。約100人の小中学生を相手に、自身の礎を築いた広島商業時代のエピソードを披露するなど金言を授けた。

「ワシはねぇ、今日はみんなの質問に何でも答えちゃるけん。どんどん質問して!」。頭を丸めた野球少年を見て自身の少年時代がオーバーラップしたのか、時折、広島弁を交えながら熱弁を振るった。「外野の守りで一番大切なのは何じゃと思う? 一歩目(の反応)じゃ。『一歩目が遅くて足が速い人』よりも『足は遅いけど一歩目が速い人』の方が守備範囲は広いんよ。一歩目を速くするには、投手のリリースから打者が打つまでの間に打球を予測して動く準備をしておくことが大事」。参加者の中には来春、甲子園常連校に進学する中学生もおり専門的な内容だった。
 
 少年たちが最も目を輝かせたのは柳田が語った「フルスイングの原点」だ。「高校の時、ワシは素振り1000本を目一杯振った。1000本振るために(周りの)みんなは力を抜いて振っとったけど、ワシは一本一本を全力で振った。ランニングとか他の練習では(こっそり)手を抜いても、素振りだけは手を抜かんかった。だから、誰よりも打ってやると思っとった。打てるようになったのは素振りのおかげ」。振り込むことで培われたパワー、振る体力が後に日本一のスラッガーを育んだ。今でも柳田はシーズン中、自宅や遠征先で素振りを欠かさない。それは広島商時代から続いている。
 
 無名の高校球児からプロとは縁遠い地元の広島六大学野球連盟(広島経済大学出身)を経て道を切り開いてきた。野球少年に向けて「この中からプロ野球選手が出てきてほしい」と柳田。球界を代表する大砲に化けた男の言葉は、子供たちの胸に突き刺さったはずだ。