人気者にも人知れず悩みがあった――。12球団トップの盗塁阻止率4割4分7厘をマークし、2年連続で「三井ゴールデン・グラブ賞」に輝いたソフトバンク・甲斐拓也捕手(26)は29日、東京都内で行われた同賞の表彰式に出席し「自分は守備を武器にやってきたので、うれしいし光栄」と喜んだ。

 先の日本シリーズでは新記録となる6連続盗塁阻止の活躍でMVPに輝くなど大ブレーク。甲斐はこの秋、最も知名度を上げたプロ野球選手と言っても過言ではない。だが「もちろん嫌な気持ちはないんですが、自分がそこまで(のレベル)とは思っていない。名前が独り歩きしている感じで周りが持ち上げてくれている。そのギャップを埋めることで必死です」と苦笑する。

 今季は自己最多の133試合に出場したが、打率2割1分3厘、7本塁打、37打点で規定打席に届かなかった。勝負どころで代打を送られたり、試合終盤に先輩捕手の高谷に“リリーフ”を仰ぐケースも多かった。本人が理想とする捕手像には程遠く「打撃の強化もそうだし、守備だけではなく全体的にレベルアップしないといけない」と言う表情は真剣そのものだ。

 当面の目標は独り歩きする「甲斐キャノン」の“虚像”に一歩でも近づくこと。「捕手としてもっと信頼を勝ち取らないといけないし、理想は城島さんや古田さんのように(攻守)両方優れた捕手。打撃強化は絶対に必要」。甲斐の次なる戦いはもう始まっている。