楽天 浅村獲得成功の裏に「情報戦の完勝」

2018年11月22日 16時30分

獲得のカギを握った楽天・石井GM

 西武からFA宣言していた浅村栄斗内野手(28)の楽天入りが21日、両球団から正式発表された。優勝チームの主将が同一年の最下位球団に移籍するという決断は常勝軍団再建を目指す西武を震撼させている。一方で、楽天の“FA下克上”の裏には西武やライバル2球団も想定すらできなかった「情報戦での完全勝利」があった。

 21日午前、メットライフドームでは西武・渡辺久信シニアディレクター兼編成部長(53)が“敗北宣言”。「本人は『環境を変えたい』という話でした。非常に残念ですが、何回も話し合って浅村選手の決めた決断なので、我々としてはそれを尊重したいと思います」と肩を落とした。

 一方の楽天は同日夕、楽天生命パーク内で“勝利宣言”だ。18日夜に2時間の交渉に当たった石井一久GM(45)は「どうしても来てほしいプレーヤーだった。ポイントゲッターとしてチームに貢献してほしい」と辰巳(立命大)を引き当てたドラフトに続く大仕事に声を弾ませた。

 4年総額28億円の巨額条件提示でも袖にされたソフトバンク、交渉のテーブルにさえつけず“門前払い”されたオリックスはむなしく予選敗退。西武残留か楽天移籍かの二者択一で浅村が決断したのは、迷ったら一歩前に出る「新天地での挑戦」だった。4年総額20億円を超える条件面、背番号「3」を提示したことはもちろん、楽天側の勝因はきめ細かな情報戦での勝利といえる。

 18日の交渉で石井GMは「僕自身、海外へのポスティング(移籍)、国内へのFA(移籍)を経験してきた人間なのでその辺の話をした。移籍をマイナスに捉えるのではなく、移籍することでプレーヤーとしても人としても幅が広がったという話をさせてもらった。一歩外に出ないと分からない経験がある。分からないままプレーヤーとして現役を終わるのはもったいない」と自らの経験をベースに選手目線で熱く訴えた。浅村の求めていた「成長できる環境」というキーワードを楽天だけがピンポイントで突き、条件面と熱意でしかアピールすることのできなかったライバル2球団に明確な差をつけた。

 もちろん、これは西武で5年間プレーをともにしている石井GM、兄貴分として慕う渡辺直や岸の西武OBトライアングルがあってこそ。このラインでしか知り得ない「生きた情報」「戦力になる情報」をいち早くつかみ、具体的な獲得戦略につなげていった連携プレーのたまものだ。シーズン中にはフリーアナウンサーである浅村の彼女を楽天制作の動画メディアにスポット起用し、則本や島内、岡島らにインタビューをさせるという新手の手法で早くから浅村側の外堀を埋めてもいた。

 楽天の西武OBトライアングルに浅村が加入して来季からカルテットとなる包囲網に、西武側は大きな危機感を抱いている。球団関係者は「牧田や(菊池)雄星のメジャー組まで含めて、石井GM、(渡辺)直人と関係のいい主力は多い。(FA移籍の)時期が来て相手方にいるOBに相談を持ちかければ、この連鎖は続くことになるんですかね」(球団関係者)

 西武は12球団最多となる17人目のFA流出者を出し、多くの球団の首脳陣、フロントにも有力OBが散らばっている。このままでは今後も“草刈り場”とされかねない。