中日のヘッドコーチに就任したばかりの伊東勤氏(56)が日米野球で存在感を示している。昨年10月から侍ジャパン強化副本部長に就任し、日米野球にも帯同。チーム編成や戦術及び戦略面で稲葉ジャパンを陰で支えている。

 今オフの中日入閣決定によって、今大会を最後に同職から離れる。それでも伊東氏は“最後の置き土産”と言わんばかりに、侍ジャパンの面々に絶妙の形で闘魂注入を行っている。

 開幕直前、台湾との壮行試合(ヤフオクドーム)を翌日に控えた6日のこと。福岡市内の宿舎で行われた全体ミーティングで報道陣が退出した後、マイクを握った伊東氏は「(東京)オリンピックに向けて今回がスタート。今までの日米野球はフレンドリーマッチみたいな感があったけれども、そういうものは一切なく勝負にこだわって戦わなければいけない」とナインにゲキを飛ばした。

 この言葉と独特の口調によって室内には緊張感が張り詰めたという。侍ジャパン関係者は「ミーティングが始まったばかりのタイミングでは白い歯をのぞかせていた選手も一部にいたが、伊東さんのマイクでそれも完全に消え去り、全員が険しい表情に切り替わった」と告白。さらに「稲葉監督も『勝負にこだわれ』と言われてハッとなったようで、いい意味でのプレッシャーがあれでかかった」という。

 2009年の第2回WBCではヘッドコーチとして原監督の連覇を強力にサポート。現在の侍ではネクタイ組だが、過去の経験もあるからこそ「稲葉監督は伊東さんに時折、助言を求めているようだ」(前出の関係者)。中日でも与田新監督の“右腕”として本領を発揮しそうだ。