ソフトバンクの強肩捕手・甲斐拓也捕手(26)が一躍時の人となっている。日本シリーズでの6連続盗塁阻止で「甲斐キャノン」として大ブレーク。日米野球でも評価はうなぎ上りだ。そんな甲斐の「これまで」と「これから」について、入団時の三軍バッテリーコーチで今季も作戦兼バッテリーコーチ補佐として成長を支えた森浩之新ヘッドコーチ(53)が言及。来季の飛躍へ「信頼」の2文字を送り、さらなる成長に期待を込めた。

 甲斐の大ブレークが止まらない。日本シリーズで6連続盗塁阻止を決めてMVPを受賞。日米野球でも注目の的だ。甲斐の育成選手1年目に三軍バッテリーコーチで、今季も作戦兼バッテリーコーチ補佐として成長を支えた森ヘッドコーチも目を細める一人だ。

 森ヘッド:育成選手として3年やってダメだったら終わりという中から始まった。当時は「背番号3桁はプロじゃないぞ。悔しかったら2桁を勝ち取れ」とか厳しいことを言っていた。確かに肩があったとはいえ、8年たって日本シリーズでMVPを取るような選手になるとは予想できなかった。そこは拓也の努力のたまものだし、いろんなコーチとの出会いや教えを生かして、ここまで成長してくれた。

 とはいえ、まだチーム内では不動の正妻とは言えない。日本シリーズでも終盤は抑え捕手のベテラン・高谷の登場を許した。扇の要である捕手として、この先求めるのはフルイニング出場だ。

 森ヘッド:今年でいえば、最後の7、8、9回を任されなかったのも事実。そこもフルで出られるようになってもらわないといけない。143試合、CS、日本シリーズも合わせた全試合に出られるようにしてほしい。最後まで任せるには打撃でも打率2割5分は打ってほしいし、後ろを投げる投手からも受けてほしいと思われる捕手になってもらわないといけない。

 かつて森ヘッドは「人はヒト」という言葉を甲斐に贈っている。甲斐の帽子のツバやミットにも記された言葉だ。常に同級生でドラ1入団の捕手・山下(現楽天)と比較されてきた甲斐に対して「周りを気にするのではなく、やるべきことをしっかりやっていれば報われる」とのメッセージが込められていた。

 森ヘッド:今は「信頼」という言葉を贈りたい。言わなくても本人も分かっているかもしれないけど、投手だけでなく、チーム、首脳陣からの信用、信頼を勝ち取ってほしい。投手との対話もしっかりして、もっともっと信頼を得ること。捕手は聞き役に徹しないといけないとも思うし、常に頭は冷静でいないといけない。まだまだ伸びしろがある選手だと思っている。

 世界に名をとどろかせたキャノン砲とはいえ、真の正妻へ発展途上の面もある。大きな注目を浴びて迎える2019年シーズンでのさらなる飛躍が期待される。