侍ジャパンは7日、日米野球(9日開幕)に向けた壮行試合・台湾戦(ヤフオク)に5―6で惜敗。9回に1点差まで詰め寄る意地を見せたが、あと一歩及ばなかった。“格下”に敗れるふがいない試合で最大の見せ場をつくったのは、日本シリーズMVP男・甲斐拓也捕手(26=ソフトバンク)。同シリーズ新記録の6連続盗塁阻止を樹立した強肩「甲斐キャノン」をこの日も発動し、観衆を沸かせた。一躍、時の人となった甲斐にはソフトバンク内で背番号を巡って注目が集まっている。

 日本は8回まで1安打に封じられる惨敗ムードだったが、0―6の9回に打者一巡の攻撃で5点を返す猛反撃。敗れはしたが、侍が意地を見せた。この試合、最も球場が沸いたのは最終回の守備だった。9回の守備からマスクをかぶった甲斐は台湾の盗塁王・王威晨(中信ブラザーズ)が仕掛けた二盗を悠々アウトにする強肩を見せつけたのだ。二死一塁の時点で「甲斐キャノン」発動を期待するファンの異様な熱気を感じながらも「準備はできていた。(台湾リーグで今季)44盗塁している情報は入っていた」と冷静に刺し、短い出場時間で強烈な存在感を見せつけた。

 今や、時の人となった鷹の正妻には、所属するソフトバンクも大いに喜んでいる。「まさにバブル状態」など球団内でも人気急騰に驚きを隠せない。人気だけでなく、日本一連覇の立役者、稲葉ジャパンの常連にまで成長した実力も球団は評価している。

 そんな中、甲斐にとっては名誉な話が浮上している。ある球団幹部が明かす。「甲斐の成長や昨年からの働きぶり、そして謙虚な姿勢は評価されている。このオフ、背番号の変更が実現してもおかしくない」。甲斐の現在の背番号は62。もちろん、この番号にも愛着を持っているが、甲斐には憧れの番号がある。甲斐と親しい関係者は「本人は『19番か27番をいつか付けたい』と話している。中でも19番への変更希望が最近は強まっているみたいだ」と明かす。

 甲斐には憧れの捕手が2人いる。一人はキャッチャーミットの“お下がり”をもらうほど心酔する西武・炭谷銀仁朗。もう一人は、著書をすべて読破するほど尊敬の念を抱く偉大な球団OBの野村克也氏だ。炭谷の背番号が27で野村氏が19だが、後者を強く意識するのには理由がある。今春、野村氏がソフトバンクの宮崎キャンプを視察した際に対面が実現し、そこで野村氏から直々に19番の継承を期待されたからだ。

 現在19番は7月末に電撃加入した助っ人左腕・ミランダが付けているが、前出の球団幹部は「甲斐が希望すれば、ミランダに調整をお願いすることはできる。ミランダが譲っていいというならば支障はない」と断言。甲斐が謙虚な性格だけに、球団内からは「フロントが甲斐の真意に気づいて、変更希望を尋ねてくれるといいんだけど」との声も上がっている。

“甲斐バブル”が絶頂に達しているだけに、このタイミングで“レジェンド番号”への変更が実現すれば話題性は十分。ユニホームやグッズ販売での貢献も大きいと予想されるだけに球団も乗り気だ。育成入団から日本シリーズMVPにまで輝いた男が運命の番号を手にするのか。