リーグ2位から日本一連覇を達成したソフトバンクの新たな戦いはすでに始まっている。巨大戦力を誇るチームを下支えしているのは育成。新戦力発掘は球団の継続的なテーマだが、近年は特に若手野手の伸び悩みが課題の一つとされる。

 そんな中、10月上旬に始まったファームの秋季練習で“革命”が起こっている。野手がティーやフリー打撃を行う際に、多くの選手が普段は着用している革手袋をはめずに素手で練習を行っていたのだ。関川三軍監督によると王球団会長からの提案により、秋季キャンプ中は基本的に素手で振る練習を全員に義務付けることにしたという。

 その狙いについて、吉本三軍打撃コーチは「今の若い選手たちは、小さいころから革手袋をはめてガッチガチに(バットを)握って振ってきた。だから、どうしてもリストの柔らかさが足りない。素手で力一杯握って振ると、当然マメが破れて痛い。だから自然と余計な力が抜ける。名選手と呼ばれる人やウチだったら内川もやっている」と解説。柔らかいリストを鍛えることで、対応力や飛距離のアップが期待できる。プロジェクトがスタートして1か月が経過したが「みんなボールを捉えた時の音が変わってきた。鈍い音ではなく乾いた高い音が出るようになってきた」(吉本コーチ)と効果が出始めているという。

 長年チームの屋台骨を支えてきた内川、松田の後継者育成は急務。近日中に発表されるコーチ人事ではファームの打撃担当として、球団OBで通算2038安打の新井宏昌氏(66=野球評論家)の招聘が有力となっている。新井氏はイチロー(現マリナーズ会長付特別補佐)の師としても有名で、素手打ちの指導でも選手を大成させてきた。王会長はファームの若鷹に「ずっとここにいてはいけない選手たち。彼らが一日も早く這い上がって、一軍の戦力にならないといけない」とゲキを飛ばす。王イズムの注入で近未来の主力の台頭が期待される。