今こそ奮い立て! 広島OBで本紙専属評論家の大下剛史氏が、ソフトバンクとの日本シリーズで1勝3敗1分けと窮地に追い込まれた赤ヘル戦士に猛ゲキを飛ばした。敵地でよもやの3連敗を喫して後がない状況ながら、怒とうの巻き返しで日本一に上り詰めた前例はある。1975年の初Vメンバーでもある鬼軍曹は「ここからの戦いで大事なのはハートだ。ナニクソと思って意地を見せよ」と後輩たちにエールを送った。

 1勝1分けで乗り込んだ敵地ヤフオクドームで行われた3~5戦では、ソフトバンクに圧倒された。第3戦が8―9、第4戦が1―4、第5戦は延長10回4―5でサヨナラ負けとスコアだけを見れば善戦とも言えるが、戦前の予想以上に力の差を見せつけられた。

 それでも地元広島のファンは温かかった。移動日となった2日は博多から新幹線で移動した選手らを一目見ようと、広島駅には約2000人のファンが集結。整理誘導のため警察官まで出動するなど大にぎわいとなった。

 ただ、ナインの心情は複雑だったことだろう。王手をかけての帰広なら胸も張れるが、前日1日はサヨナラ負け。選手、コーチとして何度も修羅場をくぐってきたカープOBの大下氏は「意外と精神的にこたえるのは、乗り物で移動した後だったりする。黄色い声援の中で、選手たちも切ない気持ちになったのではないだろうか」とおもんぱかる。

 しかし、王手をかけられたとはいえ戦いは終わっていない。過去の日本シリーズでは3連敗しながら日本一になったケースは6度ある(別表)。では、土俵際に追い込まれたチームが巻き返すためにすべきこととは何なのか?

 大下氏は「ここまできたら投手起用がどうとか、作戦がどうのではない。崖っ縁に立たされた中で、ナニクソという気持ちを前面に出せるかどうかだ。『また大下が古くさいことを…』と言われるかもしれないが、最後に勝負を分けるのが気持ちであることは今も昔も変わらない」と声を大にして訴え、こう続けた。

「第5戦でサヨナラ本塁打を放ったのは広島生まれで広島育ち、広島商から広島経済大へ進み、子供のころからカープが大好きだった柳田だ。第4戦までは一発が出ずに苦しんでいたが、折れたバットでスタンドまで運ばれた。広島がするべき野球を柳田に見せつけられたのだ。今こそ奮い立たなくてどうする!」

 1敗も許されない状況ながら、決戦の舞台は本拠地マツダスタジアムに移った。奇跡が起きるかどうかは、赤ヘル戦士の“ナニクソ魂”にかかっている。