【新IDアナライザー 伊勢孝夫】31日の日本シリーズ第4戦(ヤフオクドーム)、ソフトバンクは先発の東浜に早々と見切りをつけたことが功を奏した。広島先発の野村と同様にキレと制球力で勝負するタイプ。5回は球が高めに浮くなど危険な兆候が出ていた。広島の拙攻に助けられた面もあったにせよ、5イニングを鈴木のソロによる1点に抑えたのは上出来だ。これなら仮に天下分け目の大一番となる第8戦があっても、東浜を先発マウンドに送り出せるだろう。

 第3戦では先発のミランダを6回まで引っ張ったことでバタバタの継投になった。貴重な中継ぎ右腕である石川が右ヒジの違和感を訴えてベンチ入りメンバーから外れた影響もあったにせよ、打線が9点を奪いながら最後は1点差まで詰め寄られた。短期決戦において投手起用で我慢するのは危険であり、首脳陣も前日の継投を教訓にしたのだろう。

 第8戦があると仮定しても残り4試合。第5戦と第6戦の間には移動日もある。レギュラーシーズンでは先を見据えることも大事だが、救援陣に無理を強いるとしても日本シリーズでは最大で3日連続登板しかない。温存して後悔するぐらいなら、積極的に投手をつぎ込むことは「あり」だ。

 質量ともに戦力豊富なソフトバンクが得意とするのは先行逃げ切りである。敵地マツダスタジアムでは2試合とも追う展開となってしまったが、本拠地に戻って本来の形になってきた。そんな中で唯一の気がかりは第3戦の8回に登板し、鈴木のソロと安部の満塁弾を含む4安打を浴びて5失点と炎上したセットアッパーの加治屋に出番がなかったことだ。

 短期決戦においては失敗を引きずらないことも重要になる。この日は7回を終えて3点リード。打者1人に対してでも投げて抑えていれば加治屋もすっきりしたことだろう。8回は左の田中から始まり、右の菊池を挟んで左の丸という打順で、左腕・嘉弥真の投入が間違いだったとまでは言わない。ただ、加治屋のケアを先送りしたことで、次回登板に向けて使う側も使われる側も不安を解消できなかった。この点がどう出るかだけが心配だ。
  (本紙評論家)