【前田幸長 直球勝負】今年の日本シリーズでソフトバンクは広島に一歩リードを許したとはいえ1敗1分け。相手の土俵で2連敗しなかったととらえれば、プラスに切り替えられる。第3戦から地元・福岡で3連戦を戦える点も大きい。地の利を生かしての巻き返しへ、百戦錬磨の工藤監督は打倒カープの構想を練っているはずだ。

 その鷹の指揮官とはこんな話をした。会話の内容が短期決戦のキーポイントに及んだときだ。工藤監督はニヤリと笑い、こう言った。

「『逆シリーズ男』とか『シリーズ男』っているだろう? そういうところも鍵を握る」

 短期決戦で「シリーズ男」の有無は確かに起爆剤となる。たとえば、西武とのCSファイナルS第1戦で1番に抜てきされ、相手エースの菊池雄星から逆転打を放つなど大暴れしたベテラン・川島のような存在だ。

 シーズンと違って、短期決戦の舞台はやはり独特。シーズンで活躍した主力でも思い通りの動きができなくなって「逆シリーズ男」になる危険性もある。

「そういえば、工藤さんもシリーズ男になったことありましたよね?」

 問いかけたのは、1986年の日本シリーズのこと。現役時代の工藤監督は西武の主力として広島と戦い、第5戦で延長12回にサヨナラ打を放ち、史上初となった第8戦でも8回からマウンドに立って胴上げ投手となるなどシリーズMVPに輝いた。先発の軸でありながら最後はリリーフで胴上げ投手にもなった時の心境を指揮官は苦笑いも交え、こう述べている。

「あの時は『公康、行くぞ!』と言われてね。『え、僕でいいんですか?』と。そんな感じで思ってくれるような選手がいればいいね」

 当時の工藤監督は緊張しながらも、意気に感じて見事大役を務めた。そんな当時の自分を思い起こし、指揮官は「鷹のシリーズ男」の出現を待ち望んでいる。