【赤坂英一 赤ペン!!】「おい、こりゃ1986年の日本シリーズの再現じゃ。今回も第8戦までもつれるかもしれんぞ」

 延長12回の末に引き分けた日本シリーズ第1戦の直後、ソフトバンクの達川ヘッドコーチが私の耳元でささやいた。86年は達川ヘッドが正捕手の広島、工藤監督が先発の柱だった西武が対戦。第1戦が延長14回で時間切れ引き分けとなり、第2戦から広島が3連勝して先に王手をかけたが、第5戦から西武が4連勝で鮮やかに日本一をさらった。

「あの時、第5戦にリリーフで投げて、延長12回にサヨナラヒットを打ったんが(工藤)監督じゃった。4試合に登板してMVPになっとる。そういう監督じゃから、今年のシリーズ第1戦でも采配が冴えとった」

 とくに達川ヘッドが目を見張ったのは、スタメンから外したデスパイネの起用法。0―2で迎えた5回二死二、三塁で千賀の代打に送ると、二塁内野安打と敵失で2点を取り返し、瞬く間に同点に追いついた。

「DHのないセ・リーグの野球は難しいわ。ワシは5回でデスパイネを出すのはちょっと早いかとも思うたけど、あとで振り返ったらあそこしかなかった。ああいう決断はワシにゃできん。さすが工藤監督じゃ」

 達川ヘッドはさらに、武田、石川など計6人をつないだ継投にも言及。「早め早めに代えたんがうまいことハマった。終盤は、ゲームの流れでもウチが押しとったろ。そこからは勝ち越せんかったが、よう引き分けでしのいだと思うで」

 もっとも、だから簡単に広島に勝てるなどとは考えていない。とくに「広島バッテリーには、ウチの打線がしっかり研究されとるのがようわかったわい」という。

「第1戦の1番・上林への攻め方を見たら、初球は必ず真っすぐで入っとる。上林は変化球打ちが得意で、初球に低めの落ちる球などでこられたら、うまいこと打つんじゃ。でも、あれだけ真っすぐで攻められたら、本来の持ち味が出せん」

 実際、第2戦はジョンソンに攻撃型オーダーの打線が抑えられ、広島に1勝目を献上した。

「恐らく、ジョンソンは次回、中5日で第6戦にくる。そのときに倒さんと日本一になれん。これから対策を考えるわ」と力強く語った達川ヘッドが、どれだけ工藤監督をアシストできるのか。要注目である。