【赤坂英一 赤ペン】ひょっとしたら、金足農のエース吉田輝星は、どこも1位で指名しないのではないか――。25日のドラフトを目前に控え、スカウトの間ではこんな見方が強まっている。

 現に担当した選手が新人王を獲得した某セ球団スカウトも「吉田の1位指名がゼロでもおかしくはない」と断言する。「人気優先で指名するところがあっても1~2球団ぐらいじゃないか。外れ1位で競合しても3球団程度だろう」と言うのだ。

 なぜ、そこまで評価が急落したのかと聞くと「いや、吉田の“正味の評価”は、最初からその程度だったんです」と、このスカウトは言う。

「吉田が甲子園で三振を取った高めの真っすぐは、プロの打者は振ってくれません。平均速度も140キロ台半ばなので、あと5~6キロは速くならないと厳しい。ウイニングショットになる変化球もないから、これから覚える必要がある。吉田が一軍の先発の柱になるには、恐らく3年はかかるでしょう」

 同じ3年かかるなら、「将来性でも潜在能力でも浦和学院のエース渡辺勇太朗のほうが上でしょうね」とは、別の球団のスカウトの証言。

「渡辺は体格的(190センチ、90キロ)に吉田(176センチ、81キロ)より一回り大きい。真っすぐのスピードもコンスタントに150キロ出る。スケールの大きさからいっても、吉田より渡辺ですよ」

 一方、今年最多の1位指名競合が見込まれているのが、大阪桐蔭の内野手兼投手“二刀流”の根尾昂である。こちらは1位指名を公表している中日をはじめ巨人、阪神、楽天、オリックスなど、4~5球団がクジ引きに参戦するともっぱらだ。が、野手と投手のどちらで育てるべきかとなると、見方は真っ二つに分かれている。

 巨人、阪神が早くから「ショートで使いたい」としているのに対して、DeNAは「投手としても魅力的。以前は“野手投げ”だったが、投手として質のいい球を投げられるようになった」(吉田スカウト部長)。ヤクルトも「投手としてのポテンシャルも相当高い」(斉藤スカウト)としており、吉田以上の高評価を受けている。

 もっとも、競合の可能性が低いのならと、吉田を1位指名して“一本釣り”をもくろむ球団があるかもしれない。それが巨人なら面白いが…と思うのは私だけか。