パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦が19日、メットライフドームで行われ、2位のソフトバンクが1位の西武に15―4で完勝。対戦成績を2勝2敗(アドバンテージ含む)のタイとした。ソフトバンクは工藤監督の“勝負手”がピタリとはまった格好で、チーム一丸へ王会長も陰でチームを支えた。

 終わってみれば16安打15得点。西武打線のお株を奪う攻撃で圧倒した。工藤監督は「選手の絶対勝つという思いが形となった」と笑顔を浮かべた。

 この日はベンチが動いた。不振の松田宣をスタメンから外すことを決断。三塁にグラシアルを入れると、内川の一塁でのスタメン起用に踏み切った。指揮官は「苦渋の決断。なかなかここまで勇気のいったことはない」と話したが、その言葉通りに勝負手でもあった。

 工藤監督は今回のCSで「選手を信じる」ことを掲げてきた。シーズンを戦ったメンバーとして、143試合に出場した松田宣とも心中の姿勢を見せていた。一方で内川は一軍でのスタメンは8月14日の楽天戦以来となる。松田宣を見切った結果にもなりかねず、練習中には何やら微妙な空気も漂っていた。

 ただ、これが奏功した。内川が2安打1本塁打と起用に応えるさすがの活躍を見せれば、大一番での大ナタに悔しいはずの松田宣も持ち味でもある声でベンチを盛り上げた。首脳陣の一人も「リスクがあるのは分かった上で、短期決戦で勝つために賭けに出た。それが成功した」と話した。

 この裏では王球団会長の“密室の5分間”も強力なサポートとなったのは間違いない。試合前、スタメンから外れる松田宣を呼ぶと、球団の小部屋に2人きりで5分ほどこもった。王会長は「企業秘密みたいなものだから」と詳細は明かさなかったが「主力である松田を気遣っての声かけでしょう」(球団関係者)。王会長をリスペクトしている松田宣にとっても心強い“金言”となったはずだ。

 勝負手が決まり2勝2敗のタイにしたソフトバンク。下克上へチームも一丸となっている。