巨人の大攻勢が始まるか。球団は11日、鹿取義隆GM(61)の退任と岡崎郁スカウト部長(57)の異動などフロント体制の刷新を発表した。電撃人事の狙いは、来季監督就任が決定的となっている原辰徳氏(60)を現場、フロント両面の頂点としたピラミッドの構築。原“全権”監督の誕生により変わるのはドラフト指名方針だけではない。今後はトレードやFA補強戦略、新助っ人の調査でも強烈なリーダーシップを発揮していくことになる。

 原氏への監督就任要請から一夜明け、フロントにバッサリとメスが入った。球団発表では「退任」だが、鹿取GMは事実上の解任。「リーグ優勝を果たせなかった責任を取り、退任することを決めました」などとコメントを寄せた。さらには岡崎スカウト部長まで職を解かれた。ドラフト本番を2週間後に控えたタイミングでスカウト陣トップが“異動”するのは超異例のことだ。

 球団によると後任のGMは置かず、大塚淳弘事業本部次長兼試合運営管理室長(59)が球団副代表編成担当兼試合運営管理室長として編成業務を統括し、新監督をサポートしていくという。また岡崎氏の後任のスカウト部長は長谷川国利査定室長(56)が兼務する。

 原氏に監督就任を要請した山口オーナーは「フロントとチームが一体となって立て直しが必要。原さんにはそうした役割を期待している」としていた。鹿取GMの解任は予想されていたが、後任を置かないのは、原氏にGM権限を託すのと同義だ。新たにスカウト部長に就く長谷川氏は業界では名を知られたベテランの元スカウトだが、東海大相模―東海大出身で原氏の直系後輩でもある。

 すでにスカウト部門ではドラフト1位候補を吉田(金足農)から根尾(大阪桐蔭)に切り替えるなどの動きが出ているが、今後はその他の補強やコーチ人事でも、原氏の意向が色濃く反映されていくのは間違いない。

 今オフのFA戦線では広島・丸、西武・浅村、オリックス・西が目玉。だが巨人が参戦しても劣勢必至とみられていた。ただ原氏の球界人脈と影響力はこれまで編成部門トップだった鹿取GMとは正直比較にならない。 フロントスタッフは「オーナーも復帰の“ご祝儀”で補強費に糸目は付けないでしょう。相手がどこでも必要とあらば、ありとあらゆる手を使って情勢を引っくり返しにかかるはずだ」と見る。

 外国人調査に関しても原氏に寄せられる期待は高い。現在は新体制発足を前に様子見の状況というが「原さんは即断即決の人。厳しいが仕事のスピードは間違いなく上がる。今はどんなオーダーにも応えられるよう、国際部がNPB全外国人の契約状況を調査している」(前出のフロント)。

 退任した鹿取GMは球界にパイプが乏しく、在任中のトレードを“凍結”していたが「熱い指揮官とドライな策士の一面を併せ持つのが原さん。権限を与えられれば、あっと驚く大型トレードを成立させるかもしれないね。例えば泰示(日本ハム・大田)を呼び戻そうとしたって不思議じゃない」(チームスタッフ)。

 性急な組織改変に身内からは戸惑いの声も漏れるが、道はもう定まった。原“全権”監督の誕生で、今オフは球界に巨人旋風が吹き荒れる。