失うものがない挑戦者ほど怖いものはない。広島は4日、本拠地での巨人戦に0―4の零敗を喫した。先発・野村が6回途中2失点と踏ん張ったが、相手先発の菅野の前に打線が散発4安打と沈黙。0―2の8回には4番手の今村が阿部、長野に2者連続アーチを浴び、緒方孝市監督(49)は「簡単に点の取れる投手ではない。紙一重の打球も何本かあったけど、相手が上回ったということ」と敗戦を受け止めるしかなかった。

 菅野は今季ここまでマツダスタジアムで3試合に登板して2敗、防御率6・35。大の苦手としていたが、6月28日、7月21日、8月11日といずれも夏場のマウンドだったことから、ある首脳陣は「菅野らしい投球ができたのは、涼しくなってきたというのもあるのでは」と分析した。

 もっとも、チーム内では菅野個人よりも敵軍そのものが怖い存在に映っているようだ。CS出場圏内ギリギリの戦いを強いられている巨人は、前日3日に由伸監督が今季限りでの辞任を電撃発表。8回にダメ押しのソロを放った長野が「(監督と)一試合でも長くできるように頑張りたい」と決意を明かした通り、由伸監督に有終の美を飾ってもらおうとナインの結束力が強まった感がある。

 チーム関係者は「由伸監督は今日の試合前も笑顔でリラックスしていたし、どこか吹っ切れたような印象だった。CSまで勝ち続けなければいけない立場だけど、失うものがないというのは不気味。勢いに乗れば勝ち上がってくるかも」と警戒感を強める。

 昨年のCSファイナルステージでは、3位から勝ち上がったDeNAの後塵を拝した。もしも“一枚岩”になった由伸巨人と戦うようなことになれば、ちょっと厄介かもしれない。