巨人・高橋由伸監督(43)の電撃辞任発表から一夜明け、現場には沈痛なムードが広がった。4日、自らの責任を痛切に唱えたのは鹿取義隆GM(61)。すでに山口寿一オーナー(61)はフロント体制を刷新する考えを示しており、同GMの解任は確実な情勢となっている。ただ後任選びは難航必至だ。有力視される原辰徳前監督(60)の第3次政権ではGM職そのものを撤廃し、指揮官に全権が委ねられる可能性も浮上している。

 レギュラーシーズン終了を待たずに球団から明らかにされた由伸監督の退任。この日、広島との今季最終戦(マツダ)の前に報告とあいさつを受けたナインは、一様に複雑な表情を浮かべながら思いを吐き出した。

 主将としてチームをけん引してきた坂本勇は「まだ試合が残っているので、すごく複雑な気持ちですけど。悔しい思いもありますし…」と言葉を詰まらせ、大ベテランの阿部も「(発表の)時期が時期だけにビックリした」と驚きを隠せなかった。多くのチャンスを与えられ、4番に定着した岡本は「あと2試合あるので頑張りますとしか言いようがありません」と言葉少な。指揮官とは同い年の上原も「思うことだらけですけど、僕らは選手なので最後までやるだけです」。共通していたのは、さまざまな感情にフタをし、目の前の戦いに神経を傾ける姿だった。

 由伸政権は発足から3年連続でリーグ優勝を逃した。ナインが重い口を開く中、自身の責任を明確にしたのが鹿取GMだった。「GMとしてバックアップできなかった責任は感じている。結果がすべて。うまくいかなかったらフロントのせい。監督が矢面に立っているが、フロントの責任は重々感じている」とし、来季については「(山口)オーナーの判断に従います」と進退を一任した。

 補強面では4番候補として獲得したゲレーロが期待外れで、シーズン中の“造反騒動”の際は静観するだけで事態を長期化させた。FA加入した野上も先発ローテーションを守れなかった。前日には山口オーナーが「GMも含めてどうしていくか。ジャイアンツが危機的な状況にある。フロントとチームが一体となって立て直す」と体制刷新へ強い意志を示した。編成部門トップの鹿取GMの解任は時間の問題だ。

 親会社はすでに後任GM人事に着手している。ただ、チームの根幹たる編成業務を任せられる人材はそう簡単に見つからず、内部からは混乱ぶりが伝わってくる。読売関係者は「オーナーとしては、編成の中枢には親会社の息がかかった人間を置いておきたいはず」と話すが、一方で「人材切れ」との声も聞こえる。

 球団は原前監督に次期監督就任を要請しているが、球団内や同氏周辺では「そもそもGMのポスト自体が必要なのか」と懐疑的な見方も出ているという。交渉の行方次第では、第3次政権での原氏は“全権監督”となる可能性もある。

 果たして前に進んでいるのか…。巨人の眼前は濃霧に包まれ、一寸先が見えない。