今季限りで現役を引退する中日・岩瀬仁紀投手(43)が28日の阪神戦(ナゴヤドーム)で4―3の9回に7番手でマウンドに上がり、前人未到の1000試合登板を達成した。

 さすがのレジェンド左腕も「久しぶりに足が震えた」。託されたのは1点リードの9回。「1点差で僕を出してくれるというのは今年初めてだったんで最後はしっかり頑張りたいと思いました」と意気に感じて腕を振った。先頭の糸原には死球を与えたが、中日に同期入団した福留を含めた後続をピシャリ。今季3セーブ目を挙げ、自らの持つプロ野球記録を407セーブに更新した。試合後は、お立ち台で「まさかここまで来るとは思わなかったですけど…長い道のりでした」と言葉を詰まらせ、涙を見せた。

 球界の大先輩・江夏豊氏の叱咤激励も支えになった。岩瀬は「江夏さんは『お前は絶対に1000試合投げろ。誰もやっていないんだから』という感じで、ずっと会うたびに言ってくれていた。それはすごく印象深く残っている」と感謝する。

 今季は救援陣で唯一、開幕から一軍でプレーし続けた。体調管理にも余念はない。「故障とかケガをしてしまったら、こうやってできないので、今年、そういった意味では1年間無事にこれたことが、こうやって記録にたどり着けたのかなと思う」と振り返った。

 前人未到の大記録を達成できたのは、長年にわたって守護神として君臨してきたからだという自負もある。「ただ投げるだけではできない。実際(多くの)試合数を投げるのは、結局、そういう(厳しい)ところで投げているからゲーム数が増えるのであって。ましてや、そういうところで投げてないと一軍にいられないという部分もある」と誇らしげに言う。

“下戸の功名”もある。酒が苦手な岩瀬はストレス発散のために飲酒するということがない。「それはたぶんメリットになっているのでは。だからこうやってできたところもあると思う。ただ(飲めないと)精神的にはたぶんきついでしょ」と打ち明ける。精神的にきつい時は「それが逆に当たり前」だと思って乗り越えた。これが鉄人左腕たるゆえんだ。