ナインだけじゃない広島V3一丸秘話 フロントも!裏方も!松田オーナーの眼力

2018年09月27日 16時30分

新井(右)と喜びを分かち合う救世主・フランスア

 マジック1としていた広島が26日のヤクルト戦(マツダスタジアム)に10―0で勝ち、通算9度目のリーグ優勝を球団初の3連覇で飾った。今季は開幕4連勝でスタートし、4月24日以降は一度も首位を譲ることなくトップでゴールを駆け抜けた。巨人以外ではセ・リーグ初の偉業を成し遂げた緒方孝市監督(49)の手腕、2年連続MVPも夢ではない丸佳浩外野手(29)やエースに成長した大瀬良大地投手(27)の活躍と多々ある勝因の中で、本紙独自の視点で選んだ3つのV秘話を一挙公開する。

 マツダスタジアムでは2009年の開場後初となる胴上げで緒方監督が9度宙を舞った。22日にマジック2として王手をかけてから4試合目、勝てば優勝のマジック1から2連敗と足踏みした赤ヘルナインが、球団初のリーグ3連覇に最高の形で花を添えた。

 前日までとは打って変わって理想的な試合運びだった。初回の守備で先頭の坂口が放った強烈なゴロを一塁手の松山が横っ跳びしてアウトにすると、先発の九里が打者3人で料理。直後の攻撃では1番・田中が中前打で出塁し、菊池が犠打で送って丸の適時打で先制する。強さの象徴でもあるタナキクマルの揃い踏みから松山、野間、会沢が適時打で続き、安部の犠飛も含め一挙5得点。5回には野間が適時三塁打を放つなど、先発野手全員安打で2位ヤクルトに力の差を見せつけた。投げては九里が8回2安打無失点の力投で8月22日以来の白星となる8勝目をマーク。9回は守護神の中崎が締めた。

 2位以下とのゲーム差以上に苦しいシーズンだった。25年ぶりのリーグVとなった2016年は野村の16勝を筆頭にジョンソン15勝、黒田10勝と先発3投手が2桁勝利を挙げ、37年ぶりのリーグ連覇となった昨季も薮田が15勝、岡田12勝、大瀬良10勝と3人が大台に乗せたが、今年は15勝の大瀬良と10勝のジョンソン2人だけ。しかもジョンソンは1試合平均投球回が6回に満たず、5回以下での降板が8度あり、救援陣の負担も増えた。

 緒方監督は窮地を救った一人に迷わずフランスアの名前を挙げる。14年秋にドミニカ共和国から練習生として初来日し、今年になって育成選手から支配下選手へとステップアップしたシンデレラボーイは2度の先発を経て交流戦最終戦となった6月18日の日本ハム戦から救援陣に定着。同26日の巨人戦で来日初勝利を挙げると、あれよあれよという間にセットアッパーに収まった。8月はプロ野球タイ記録の月間18試合に登板し、防御率0・51と抜群の安定感で10ホールドをマーク。月間MVPにも輝いた。

 チームの誰もが「フランスアがいなかったらと思うとゾッとする」と評するドミニカン左腕が大躍進した背景には松田元オーナー(67)の眼力があったという。関係者が明かす。

「一昨年秋のことです。チームはぶっちぎりで優勝しましたが、現場首脳陣は左腕不足解消を課題に挙げていて、ワンポイントでも使えればと伸び悩んでいる若手数人を横手投げに変えたんです。その中に当時は練習生だったフランスアもいたのですが、それを知った社長(松田オーナー)が激怒して、鶴の一声で投球フォームを元に戻したんです」

 現場サイドとしては、チームにとって良かれと思ってしたことだった。ただ、そのまま横手投げになっていたら、今季のフランスアの活躍はなかったかもしれない。松田オーナーはスカウト会議で全ての報告や動画を細かくチェックするだけでなく、気になる選手がいれば自ら球場に足を運ぶこともある。他球団がおいそれとマネできることでないのは確かだ。

 現場を支えようという思いは、何もフロント幹部をはじめとしたスーツ組ばかりではない。打撃投手やブルペン捕手などの裏方さんも「つまらないことで足を引っ張りたくない」との思いから例年以上にコンプライアンス(法令順守)を徹底した。「リーグ連覇もしたし、どこで誰に見られているか分からない。それこそ『道路を渡るときは横断歩道を通ろう』とか『夜間に自転車に乗るときは必ずライトを点灯する』といったことも、お互いに注意し合うようにしています」(スタッフの一人)

 安全を確認した上で歩行者横断禁止の標識もない場所なら、道路を横断してもルール上は問題はない。ただ“証拠画像”とともに「子供がマネをしたらどうするんだ」などとSNS上で言いがかりをつけられないとも限らず、細心の注意を払っているというわけ。最大のライバルと目されながら数々のスキャンダルでムードを悪くしていった巨人との差は、こんなところにも表れていた。

 球団が一丸となってつかんだリーグ3連覇ではあるが、打高投低の傾向が顕著となったことで、投打の間には自然と溝ができた。それが深刻化しなかったのは二遊間コンビの菊池と田中が打撃不振に陥っていたからだと見る向きがある。緒方監督も「何とか守備で貢献しないといけないという思いは2人からヒシヒシと感じていた」という。レギュラー野手全員が好成績なら投打が真っ二つに分かれてしまう危険性もあったが、結果としてセンターラインを担うタナキクの好守が投手、さらにはチーム分裂の危機まで救う格好となった。

 ひとまず球団初の偉業は成し遂げた。一昨年は日本シリーズ、昨年はCSファイナルステージで悔しい思いをした。今年7月の西日本豪雨で被災した地元の人々を元気にする使命もある。あくまでリーグ優勝は通過点。目指すは34年ぶりの日本一だ。